[Webマール]

(2023/04/25)

[寄稿]日本企業向け「対日M&A活用に関する事例集」の公表(経済産業省)

経済産業省貿易経済協力局投資促進課
  • A,B,EXコース

(公表サイト)経済産業省Webサイト URL: https://www.meti.go.jp/policy/investment/index.html

1 はじめに(背景・概要)

 近年、複数の日本企業が、海外資本の持つグローバルネットワークやノウハウ等を活用して、経営の高度化や人材の強化・育成、海外販路の拡大などを実現している。日本政府としても、海外からの人材・資金の呼び込みに取り組んでおり、海外資本の活用方法の一つである外国企業又は海外PEファンドによる日本企業へのM&A(以下「対日M&A」という。)の件数・金額も増加傾向にある。

 事例集作成に当たって、有識者による対日M&A課題と活用事例に関する研究会を設置するとともに、企業の協力を得て対日M&A事例を調査し、対日M&Aのメリットや留意点、成功要因などを研究した。これらを踏まえ、海外資本を有効に活用した20事例からなる日本企業向けの事例集「対日M&A活用に関する事例集~海外資本を活用して、企業変革・経営改善・飛躍的成長につなげた日本企業のケーススタディ~」(以下「事例集」という。)を取りまとめた。

 本稿では、事例集のポイントとなる部分を抜粋して解説する。具体的な事例の内容などは、事例集をご覧いただきたい。

(事例集の主な特徴)
  • 対象会社の業種や地域、買い手の国籍等のバランスを考慮して、20事例を選定(全事例を実名掲載)。大企業のカーブアウトのほか、地域の中堅中小企業の事業承継、スタートアップ企業の事例を含む。
  • 対日M&A事例を企業規模や取引形態等を踏まえ、わかりやすく4パターンに分類するとともに、企業が抱える課題や希望するメリットに応じて、事例の検索ができる索引付。
  • 課題解決の取組や成長過程を、従業員の生の声とともに記載。対日M&Aの良い面だけでなく具体的な苦労などにも触れることで、実践的な事例集となるよう工夫。
(参考:対日M&A課題と活用事例に関する研究会)
https://www.meti.go.jp/shingikai/external_economy/m_and_a/index.html
【委員】◎座長 (敬称略・五十音順)
・有沢 敏宏  (株式会社日立製作所 財務統括本部 財務本部 事業開発財務部長)
・岩口 敏史  (株式会社レコフデータ 取締役会長)
・太田 洋    (西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士)
・大塚 博行  (カーライル・ジャパン・エルエルシー 副代表兼マネージング・ディレクター)
・清田 耕造  (慶應義塾大学産業研究所・大学院経済学研究科 教授)
・東 陽介    (森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士)
・別所 賢作  (三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 取締役 副社長執行役員)
◎宮島 英昭  (早稲田大学商学学術院 教授)
・谷田川 英治 (株式会社KKRジャパン パートナー)
・渡井 理佳子 (慶應義塾大学大学院法務研究科 教授)
【実施内容】
・2022年9月22日   第1回会合(調査対象企業の抽出方針、事例に盛り込むべき内容等)
・2022年11月21日  第2回会合(事例の調査状況、周知方法の検討、事例集の方向性等)
・2023年1月24日   第3回会合(事例集(案)の確認)

2 対日M&Aの概況

 対日M&A(OUT-IN)の件数は、2000年頃から2013年頃まで減少傾向であったが、その後10年間では増加傾向にある。金額は、大型案件の有無等の要因により変動があるものの、2013年以降、増加傾向にある(図表1)。2022年の対日M&Aの金額は、日本企業同士のM&A(IN-IN)及び日本企業による海外企業のM&A(IN-OUT)とほぼ同程度となっている(図表2)。

図表1 対日M&A(買収・事業譲渡) 件数・金額 2000-2022年

出所:レコフM&Aデータベースから作成(OUT-INの場合、日本企業の海外法人売却を除く。金額非公表案件も存在)

図表2 対日M&A等(買収・事業譲渡) 件数・金額(3年移動平均) 2001-2021年

注:3年移動平均は、当該年の値に前後1年の値を加算して年数3で除した平均値(例:2021年は、2020~2022年の平均値)
出所:レコフM&Aデータベースから作成(OUT-INの場合、日本企業の海外法人売却を除く。金額非公表案件も存在)

3 対日M&Aを活用した企業が直面していた課題

 近年、複数の日本企業が、海外資本の持つグローバルネットワークやノウハウ等を活用して、海外販路の拡大や経営の高度化、人材の強化・育成などを実現している。急激に変化する経営環境において、企業が持続的成長を続けるためには、事業ポートフォリオの見直しやイノベーション創出、グローバル展開の強化、DXの推進や生産性・収益性の向上、ESGやダイバーシティ経営等の困難な課題への迅速な対応が必要である。本事例集では以下の課題について対日M&Aを活用して解決した日本企業を取り上げている(図表3)。

図表3 対日M&Aを活用した企業が直面していた課題
企業・事業戦略
■主力事業とシナジーのない事業や子会社がある
■海外で先行する分野における商品・サービスやビジネスモデルを活用し収益基盤を確保したい
■円滑に事業承継を実施したい(オーナーに頼らない組織経営への移行)
人材・体制
■更なる事業成長に向けて自社に不足する経営人材を獲得したい
■体制整備(上場を含む)や魅力あるエクイティストーリーを構築したい
資金・ノウハウ
■海外展開のノウハウやネットワークが不足している
■グローバルな知見によるDX推進や生産性の向上につなげたい
■自社や国内企業の技術力・資金力では今後の事業開発に限界がある
■同業他社などM&A(企業買収)を実施したいが資金やノウハウが不足している
4 対日M&Aの留意点

 対日M&Aには多数のメリットがあるものの、留意すべき点も存在する。なお、一部の留意点は、対日M&Aに限ったものではなく、国内企業同士のM&A等にも共通する。本事例集では、企業内・企業同士での留意点と法的留意点という2つの観点から整理した(図表4)。

図表4 対日M&Aの留意点

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