ラクスル(東京都品川区)は、「国内外のBtoBの受発注の仕組みを変える」ビジネスを手掛けるIT企業。印刷をネットで仲介する「ラクスル」のほか、子会社で運用型テレビCMを中心にマーケティング支援をおこなう「ノバセル」などを運営する。大きな市場規模を持つ各産業を一体的なプラットフォームで展開することに強みを持つ。9月25日には印鑑の通販サイトを運営するAmidAホールディングス(HD)に対する
TOBを完了した。AmidA HDの買収では、印鑑と印刷物のクロスセルの実現により、事業規模の拡大が期待される。どのようにして事業展開を進めていく方針か、CAO(最高管理責任者)に聞いた(編集部)。
ラクスルの事業構造とM&Aについての考え方
―― ラクスルとはどのような会社ですか。
「市場規模は大きいものの構造が伝統的なままの産業に注目し、その産業にIT技術を駆使した独自の仕組みを持ち込むことで事業を展開しています。元々は内製での事業立ち上げが主流で、ネット印刷・集客支援のプラットフォームラクスルをはじめ、マーケティングのプラットフォームノバセルや物流のプラットフォームハコベルといった事業を展開してきました。
2009年の創業以来、現・会長の松本恭攝が経営を引率し、2018年に上場しています。その後、事業範囲や顧客属性が拡大し、利益が一定の水準に達した2020年以降、M&Aを選択する戦略のオプションが増えてきました。2023年に社長交代があり、従来の事業立ち上げの強みに加え、M&Aを活用しての成長戦略も取り入れるフェーズにあります。この2、3年でM&Aを活用することでさらなる成長が期待できるという認識が強まっており、今後さらにこの方針を加速させていくのが現在のステージです」
―― 直近での成長戦略は?
「祖業の印刷事業では、ネット印刷を中心にサービスを提供しています。チラシや名刺など紙への印刷のみならず、梱包資材、ノベルティやアパレルといった周辺事業に対しても、適切なサプライヤーを見つけて市場や商品、顧客の領域を拡張し、サービスの価値洗練につなげてきました。その結果、ローンチ当初の主要な顧客層は中小企業や個人事業主でしたが、現在は大企業の利用も増えています。
直近の成長戦略として、自社のサービス領域を拡大するオーガニックグロースに加え、買収を通じてサービスカテゴリーを拡充しています。具体的には、ダンボールワンという会社を買収し、梱包資材の領域を拡大しました。また、ペライチという会社は紙の領域とは異なりますが、簡単にウェブサイトを作成するサービスを提供しており、同社への出資によってウェブ領域のサービスが拡充されました。
以降も、市場や商品の領域拡張、顧客の拡張、サービス価値の向上を目的に、M&Aを推進していきます。そして、さらなる成長に向けて複数事業をマネジメントし、最適なグループ経営をおこなっていきます」
【図表1】ラクスルの事業構造とM&Aの実施方針
■西田 真之介(にしだ・しんのすけ)
青山学院大学卒業後、森ビル、ディー・エヌ・エーを経て、2014年8月入社。管理部門の立ち上げからIPOをリードし、部門全体を統括。上場後はコーポレートアクション全般を管掌し、Chief Administrative Officerとして企画・設計・実行を牽引