左から金田欧奈氏、石井克典氏
中小・中堅企業に特化した投資を手掛ける
PEファンド、ベーシック・キャピタル・マネジメント(BCM)は2024年9月、投資先の佐藤型鋼製作所(佐藤型鋼)の全株式を東証プライム市場上場の丸一鋼管に売却した。
BCMは佐藤型鋼への投資期間中、経営の組織化を推進して社長依存の経営から脱却させるとともに、社員発のアイデアを積極採用するなどして売上高を大きく伸ばすことに成功している。
BCMの金田欧奈代表取締役社長と本件を担当した石井克典ディレクターに、投資方針と佐藤型鋼の
イグジットまでの取り組みの全容を聞いた。
投資先を巻き込み変化を促す ―― BCMの現在の投資状況について教えて下さい。
金田 「2020年に組成した5号ファンドは計画から前倒しで14件の投資を完了し、2025年1月から6号ファンドの投資を開始しました。6号ファンドのサイズは400億円弱で、5号ファンドから100億円ほど増やしています。
ファンドサイズが拡大すると投資先の規模も大きくなりがちですが、我々は引き続き中小企業を中心に取り組みます。6号ファンドでも、営業利益1億円~15億円程度の企業を投資対象とし、従来からの投資ターゲットは変えていません。投資件数をさらに増やしていきます」
―― 体制も拡充しているのですか。
金田 「メンバーも増えて現在は17人のチームです。人数が増えることも大事ですが、それ以上に1人当たりの投資件数を増やしていきたいと思っています。
キーワードを挙げるならば、『巻き込み力』です。我々は優良企業に投資しますので、どの会社にも優秀な役職員が多くいます。その業界に精通している優秀な面々を巻き込み、まず会社の方向性を共有します。その後、変わるべき方向を定め、進めるためのスピードと実行力を高め、変化を促し続ける役割を我々が担います。人を巻き込み、変化の方向性を明確にし、そこへ向かって前進していく。言わば『巻き込み力』とは、『経営力』そのものかもしれません。取り組みを続け、変化や成果を実感する時間を共にすると、株主と経営の垣根が良い意味で崩れて、さらにスピードが上がります。
投資先企業が自ら変革を推進する状態を作ることができれば、我々はその分、新たな投資案件に向かうことができます。投資件数が増えることも大事ですが、何よりBCMメンバーの場数が増え、磨かれます。私がこの数年間で格段に向上したと感じているのはこの点で、私以上に本人たちが実感していることだと思います。ファンドの規模を拡大したのも、今のメンバーであればより多くの投資をこなせると考えたからです」
■金田 欧奈(かねだ・おうな)
東京工業大学工学部卒業、米国公認会計士、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員、日本プライベートエクイティ協会理事
デロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)戦略ファイナンス事業部にて、M&Aコンサルティング業に従事した後、2006年よりベーシック・キャピタル・マネジメントに参画。事業承継支援、ベンチャー企業の成長支援、老舗企業の再生支援、大企業子会社カーブアウト支援等、さまざまな課題を持つ企業への投資及び経営支援を主導。
■石井 克典(いしい・かつのり)
明治大学経営学部卒業。ダイヤモンドリース(現三菱HCキャピタル)、グラックス・アンド・アソシエイツを経てジェイ・ウィル・パートナーズにて投資実行業務に従事。2021年よりベーシック・キャピタル・マネジメントに参画。事業承継支援・成長支援・カーブアウト支援を担当。