[日本M&A市場 大変革の時代]

(2024/07/04)

第3回 株主のエンゲージメントによるM&A加速

奥野 慎太郎(ベイン・アンド・カンパニー パートナー)
大原 崇(同 パートナー)
  • A,B,EXコース
ポイント
〇「もの言う株主」の増加は、金融資産が過剰で成長投資が乏しく、シナジーに乏しい多角化が進んでしまっているという日本の上場企業の株価の歪みの表れ
〇「もの言う株主」の中にも、持続的な企業価値向上を重視する投資家が存在。そうした投資家との建設的対話は、攻めのM&Aやノンコア事業売却を含めた企業価値向上のアクションを加速する可能性
〇持続的な企業価値向上を重視する株主との協調の鍵は、コーポレートガバナンスの強化と、発行体として付加価値のある株主に投資してもらう努力にある

 近年、日系上場企業のM&Aが加速している1つの背景として、いわゆる「もの言う株主」による株主提案(いわゆるアクティビズム)の存在感が増している。既に日本はアクティビズム大国で、株主提案の数ベースで比較すると、米国に次ぐ世界第2位となっている。本連載第2回で考察した「同意なき買収」同様、近年では政府も経営陣に対してこうした株主提案に真摯に向き合うように促しており、もはや「特殊株主」とは言えない存在感を示しつつある。

図表1
日本はアメリカに次ぐ「アクティビスト大国」

 日本でこうした「もの言う株主」の存在感が大きくなる理由は、…


■筆者プロフィール■

奥野氏

奥野 慎太郎(おくの・しんたろう)
ベイン・アンド・カンパニー パートナー
産業財・自動車、テクノロジー、消費財、流通等の業界において、M&Aや事業ポートフォリオ戦略、構造改革などを中心に、幅広い分野の経営支援を手がける。ベイングローバル取締役会メンバー、日本法人会長。 産業財プラクティスの日本のリーダー。京都大学経済学部卒業、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。東海旅客鉄道(JR東海)を経て、2003年にベインに入社。

大原氏

大原 崇(おおはら・たかし)
ベイン・アンド・カンパニー パートナー
15年以上にわたり、電機・電子機器メーカー、半導体、自動車、運輸等の幅広い業界の国内外のクライアントに対するコンサルティングに従事。全社ポートフォリオ戦略、成長戦略、コスト構造改革、戦略立案から買収後の統合支援までの国内外のM&A支援等、多岐にわたるテーマのプロジェクトを手がける。ベイン東京オフィスにおけるM&Aプラクティスリーダー。東京大学法学部卒業。パソナ、外資系コンサルティングファームを経てベインに参画。

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