市場に対する不満が惹起するMBO ―― 弁護士として、経営者からM&A関連の相談を受けることも多いと思います。2025年のM&A市場をどのように展望していますか。
「2025年はよりいっそう
MBOが活発に行われると見ています。2023年3月に東京証券取引所が『
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について』を公表して以降、
PBR(株価純資産倍率)が1倍に達していない上場企業は改善に向けた対応を強く求められてきました。経営者は、投資家やアナリストたちから厳しい指摘を受け続け、さらに一般投資家からも株主総会で批判されたり、会社宛てに文句の電話がかかってきたりしています。経営改善策として何か手を打とうにも、単一の事業だけを手掛けているような企業の場合には、せいぜいコストカットくらいしか有効な手立てがなく、PBRを1倍超にすることが絶望的なケースもあります。このような環境において、上場していることに嫌気がさし、MBOによって市場から出て行きたいと考えている経営者はたくさんいます」
■中村 直人(なかむら・なおと)
1983年一橋大学法学部卒業。1985年森綜合法律事務所(現森・濱田松本法律事務所)入所。1998年日比谷パーク法律事務所開設。2003年中村直人法律事務所(現中村・角田・松本法律事務所)開設。2023年中村法律事務所開設。会社法、コーポレートガバナンス、コンプライアンスに関係する事案を多数取り扱っている。