今夏以降、企業が積極的に海外に進出する動き ―― 現在の日本のM&Aマーケットについてどのように見ていますか。
「2024年前半のM&Aマーケットは統計的には対前年比でそれほど大きな伸びを見せていませんでしたが、大型ディールに関してはトレンドが変わっています。2024年の夏以降から大きなディールが幾つか出てきたと認識しています。日本企業が海外進出を望む動きは以前から続いていましたが、為替や景気の不安定さ、インフレへの懸念から、これまではなかなか動き出せない企業が多かったのです。
しかし、今夏以降は企業が積極的に海外に進出する動きが増えてきました。また、
アクティビスト活動が契機になって、色々な動きが出ています。2025年もアクティビストの影響は続くでしょう。アクティビストそのものの影響力に加えて、東京証券取引所や経済産業省のガイドラインによって、企業サイドが株価向上を図る必要性が強く意識されるようにもなりました。
また、社外取締役の立場にも変化があります。仮に株主からの信任を得られなかった社外取締役は、他企業で社外取締役を務めることが難しくなります。そのため、社外取締役もアクティビストからの否決を避けつつ、経営陣と協力していかなければならない状況となっています。
■大塚 雄三(おおつか・ゆうぞう)
1992年東京大学法学部卒、94年シカゴ大学ロースクール修了、95年東京大学大学院修了。リーマン・ブラザーズ証券、モルガンスタンレー証券、UBS証券投資銀行本部長を経てラザードフレールに勤務。2016年投資銀行部門M&Aアドバイザリー部長としてバークレイズ証券に入社、2024年10月より現職。