[カーブアウト・事業売却の人事実務]

2023年7月号 345号

(2023/06/09)

第6回 退職給付制度の再構築

奥平 剛次(マーサー ジャパン 年金コンサルティング部門 リーダー シニアプリンシパル)
  • A,B,C,EXコース
事業再編時における退職給付制度の取り扱い

 前回までにも触れてきたとおり、事業再編において退職給付制度、特に確定給付年金制度(DB)の取り扱いは、価格調整などのプライシング問題、制度引継ぎのスタンドアローン問題、対象従業員からの同意取得、行政および金融機関との調整など、対応すべきポイントが多岐に渡るため、事業売却を円滑に進めるためには、平時において現制度を見直しておき、対応方針を整理しておく事が望ましい。

買い手側から見たDB

 一般的に、買い手としては、売り手の年金債務を極力引継ぎたくないと考えている。特にDBについては資産運用リスクも抱えることになるため、尚更敬遠される。また、引継ぎ時の対応においても、以下のような点から、売り手の制度にDBがあると厄介であると捉えられる傾向にある。
  • 給付カーブが、例えば勤続20年で急に上昇する制度が多く、買収後に制度を変更する場合、さまざまな勤続年数の対象従業員が不利益にならないよう移行措置を設けるのが難しい(例えば勤続19年の従業員に対する現行制度の期待権をどう保障するか、など)ため、確定拠出年金制度(DC)を中心とした勤続年数に対しフラットな給付カーブを持っている制度が好ましいと考えている。
  • 制度をそのまま引き継ぐにしても、まず対象従業員のためのDBの管理を引き受けてくれる金融機関(受託機関)を見つける必要がある。そのうえで、



■筆者プロフィール■

奥平 剛次(おくひら たけつぐ)奥平 剛次(おくひら・たけつぐ)
マーサー ジャパン 年金コンサルティング部門 リーダー シニアプリンシパル / 日本アクチュアリー会正会員・年金数理人
年金関連業務における約20年の経験を有する。数理計算、制度設計、年金ALM、M&Aにおけるデューデリジェンス・契約交渉・PMIなど幅広いプロジェクトをリード。マーサー入社前は大手信託銀行において、企業年金に関する制度設計、数理計算業務及び運用提案などの業務に従事。
著書に「カーブアウト・事業売却の人事実務」(2022年中央経済社刊、共著)がある。
東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻修了

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