[ポストM&A戦略]
2015年9月号 251号
(2015/08/17)
企業のグローバル化には段階があり、従ってグローバル人材マネジメントにもそれに応じた段階が生まれることを前回説明した。今回は話をさらに進め、日本の人材マネジメントに広く見られる、グローバル化の段階の違いだけでは説明できない根源的な特徴について、クロスボーダーM&Aに関わる読者が知っておくと役に立つポイントを取り出して解説したい。
グローバルプラクティスとの比較で見る日本の人材マネジメントの特異性:①経営層の報酬水準
日本企業の経営者の報酬水準は、グローバルプラクティスと比べてかなり低い。実際、クロスボーダーM&Aでは、買収先がそんな大きな会社でなくても、その経営トップや経営層が買い手本体の経営トップよりもはるかに高い報酬をもらっているケースは多い。経営者報酬の専門家に言わせると、「海外の経営者の報酬はなぜそんなに高いのか」ではなく、「日本の経営者の報酬はなぜそんなに低いのか」が問題なのである。
図1は、2013年のデータで各国の時価総額上位企業30社のCEOの報酬の中央値を比較したものである。但し、USについては、企業規模が違い過ぎないように、最上位の10社は除外し、11位から40位の30社の中央値を用いている。なお、報酬分析では、母集団の平均値ではなく、中央値を用いるのが通常である。
念のため、数字の読み方を解説する。USのCEOは、年間報酬が13.9億円で、そのうち基本給が1.5億円、STI(Short Term Incentive, 年次賞与)が2.7億円、LTI(Long Term Incentive, 長期インセンティブ)が9.7億円、という意味である。LTIについては、これだけの価値のインセンティブがこの年に付与され、3年程度の所定の期間に業績、在籍などの一定条件を満たすと権利確定して支払われる、ということである。支払いのタイミングは基本給やSTIより遅れるが、権利確定条件を満たせば遠からず支払われる。
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