[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2024年8月号 358号

(2024/07/09)

【ベインキャピタルの担当者が明かす】アウトドア用品大手「スノーピーク」MBOの経緯と成長支援策

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近藤 隼人(こんどう・はやと)

近藤 隼人(こんどう・はやと)

ベインキャピタル・プライベート・エクイティ・ジャパンLLC プリンシパル
京都大学工学部学士、東京大学大学院工学系研究科修士、ロンドン・ビジネス・スクール経営学修士(MBA with Distinction)。メリルリンチ日本証券の投資銀行部門で、製造業、小売、金融等の業界におけるM&Aおよび資金調達業務に従事。2014年ベインキャピタルに参画。

MBOを決断した背景

 アウトドア用品大手のスノーピークが米投資ファンドのベインキャピタルと組んで実施したMBOが4月に成立した。普通株式の案件価値は約480億円。7月9日に東京証券取引所プライム市場への上場が廃止となる見通しだ。新生スノーピークの株主構成はベインキャピタルが55%、山井太(とおる)社長らの創業家が45%となり、株式の非公開化後も山井太社長が経営にあたる。

 スノーピークは、1958年初代社長の山井幸雄が金物問屋「山井幸雄商店」を新潟県三条市に創業したのが始まり。登山を趣味としていた幸雄氏は、当時の登山用品に不満を持ち、オリジナル登山用品を開発し1959年から全国に販売を開始した。スノーピークがオートキャンプという新たな事業領域を切り拓くことになったのは、1986年に幸雄氏の息子である現社長の太氏の入社がきっかけだった。太氏は、それまでバックパッカーやヒッチハイカーといった若者たちのものというイメージを持たれていたキャンプをアウトドアライフスタイルととらえ直し、家族の絆を深めるための豊かな時間としてのキャンプを提唱。1996年に太氏が代表取締役社長に就任すると同時にスノーピークに社名変更した。

 2020年2月頃から新型コロナウイルス感染症が拡大したが、新型コロナ禍で「3密」を避けられるアウトドアがブームとなり、スノーピークの業績も向上した。2019年12月期に142億円だった売上高(連結)は2020年12月期に167億円(前期比17.6%増)、2021年12月期は257億円(同53.4%増)、2022年12月期には307億円(同19.7%増)まで拡大した。しかしその後、市場全体としては調整局面に入り、2024年1〜3月期の連結決算では、売上高が前年同期比24.8%減の48億円となっている。

 こうした状況下、太氏は事業の舵を大きく切って株式を非公開化した上で、機動的かつ柔軟な意思決定を可能とする株主と経営陣が一体となった強固かつ安定した新しい経営体制を構築して成長戦略・事業構造改革を実行することが最善の手段であると判断してMBOに踏み切った。

 パートナーとなったベインキャピタルは、全世界で約1850億ドルの運用資産を持つ国際的投資会社。2006年に東京拠点を開設して以来、システム情報、IDAJ、エビデント(旧オリンパスの科学事業を承継)、インパクトホールディングス、マッシュホールディングス日立金属(現プロテリアル)、ネットマーケティング、トライステージLinc’well、日本セーフティー、イグニスキリン堂ホールディングスヘイ(現STORES)、ニチイ学館、昭和飛行機工業、チーターデジタル(現エンバーポイント)、Works Human Intelligence、東芝メモリ(現キオクシア)等、34社に対して、そしてグローバルでは1984年の設立以来約400社、追加投資を含め1350社以上に対して投資実績を有している。

 スノーピークのMBOを担当したベインキャピタルの近藤隼人 プリンシパルに、MBOに至った経緯と今後の成長戦略を聞いた。

<インタビュー>
ベインキャピタルのネットワークを活かして海外販路を拡大

 近藤 隼人(ベインキャピタル・プライベート・エクイティ・ジャパンLLC プリンシパル)

<目次>
  • MBOの経緯
  • アウトドア市場の動向
  • スノーピークの魅力
  • 成長戦略
  • 異なるビジネス領域をM&A等の手段も活用しながら取り込む
MBOの経緯

―― スノーピークがベインキャピタルと組んで行ったMBOが2024年4月に成立しました。MBOの経緯についてお聞かせください。


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