[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2023年11月号 349号

(2023/10/11)

第223回 百貨店業界~市場縮小の中で大型再編(2007~2008年)後の大手百貨店はどう動いてきたか(第3回)

澤田 英之(レコフ 企画管理部 リサーチ担当)
  • A,B,EXコース
 前々回前回に引き続き今回も百貨店業界の動向について述べてみたい。これまで2回に亘って同業界の概況と、2007年に大丸と松坂屋の経営統合によって発足したJ.フロント リテイリング、及び、阪急百貨店と阪神百貨店の経営統合によって発足したエイチ・ツー・オー リテイリングの動向について概観した。今回は2008年に伊勢丹と三越の経営統合によって発足した三越伊勢丹ホールディングス(以下「三越伊勢丹HD」)の動向について解説する。
【関連記事】
第221回 百貨店業界 ~市場縮小の中で大型再編(2007~2008年)後の大手百貨店はどう動いてきたか(第1回
第222回 百貨店業界 ~市場縮小の中で大型再編(2007~2008年)後の大手百貨店はどう動いてきたか(第2回
5. 三越伊勢丹HD

■統合により業界トップに

 2007年のJ.フロント リテイリング及びエイチ・ツー・オー リテイリングの発足に続き、2008年には伊勢丹と三越の経営統合によって三越伊勢丹HDが発足した。これにより売上高約1兆5000億円となる業界トップの百貨店が誕生した。

 図表1は統合発表前の両社の業績である。伊勢丹は2003年に全館リモデルした新宿の「メンズ館」が好調だったことなどによって売上高が伸び、2007年3月期の営業利益率は4%を上回った。一方、三越は地方都市の店舗の不振などによって売上高は減少し営業利益率は1%台にとどまっていた。2007年2月期には大丸が三越を上回る売上高8370億円を計上し、三越は業界4位に順位を下げた。

 三越の業績が悪化する中、2007年に統合が発表された際には「伊勢丹による三越の救済色が濃い」との報道が複数みられたが、実際には事業環境が大きく変化する中で、伊勢丹は新宿の本店に対する売上高依存度が大きいことに危機感を抱くようになり、銀座や日本橋に基幹店をもつ三越との統合に踏み切ったという。

(図表1)経営統合前の伊勢丹及び三越の業績
企業名伊勢丹三越
決算期(西暦)05/3月期06/3月期07/3月期05/2月期06/2月期07/2月期
売上高(億円)6,2907,6007,8188,8788,4208,041
営業利益(億円)192301323152153126
営業利益率3.1%4.0%4.1%1.7%1.8%1.6%

(注)統合発表のリリースより作成

■一貫性を欠いた経営方針

 三越伊勢丹HDは2009年、三越池袋店及び三越鹿児島店、2010年には伊勢丹吉祥寺店、また、2012年には新宿三越アルコット店を閉鎖した(図表2参照)。一方で2010年には基幹店である三越銀座店を1.8倍増床した。また、2011年には三越伊勢丹HD傘下で各店舗の「伊勢丹」と「三越」というブランド名を残したまま、伊勢丹と三越が合併し三越伊勢丹が発足している。


■筆者プロフィール■
澤田 英之(さわだ・ひでゆき)
レコフ 企画管理部 部長(リサーチ担当)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

関連記事

バックナンバー

おすすめ記事

スキルアップ講座 M&A用語 マールオンライン コンテンツ一覧 MARR Online 活用ガイド

アクセスランキング