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[ニューノーマル時代の日本企業M&Aの指針]

2021年9月号 323号

(2021/08/16)

第9回 買収先経営体制のトランジション

小川 名穂子(マーサー ジャパン M&Aアドバイザリーサービス部門 マネージャー)
買収先経営体制の交代を検討する背景

 日本企業が、クロスボーダーM&Aにより海外企業を買収した場合、多くは買収時の経営体制をそのまま維持する。買収に当たり、買収先トップマネジメントならびに主要幹部が、少なくとも一定期間は確実に対象会社に留まるようリテンション策を講じ、1-2年間の在籍条件によるボーナスを支給することも一般的である。買収先事業が、買い手日本企業と同一の事業であったとしても、買い手企業が海外企業の経営をすぐに担うことができる経営人材を派遣できることは現状稀であるし、近年増加している異業種や新領域事業の買収においては、なおさら難しい。また、従業員の不安を煽らず、事業を安定的に継続するという観点においても、経営体制に変更がない方が、メリットが大きい。

 では、その買収先経営体制は、その後いつまで継続するのか。買収時経営体制下で、買収後も着実に業績を伸ばし、買収時に親会社が期待した業績を達成している時は、経営者の交代を検討する必要性はないだろう。だが一方、事実として、買い手が想定した通りに業績が上がらず、買収後2-3年で停滞ないし低迷に陥るケースは少なくない。また、そもそも買い手が期待する業績目標や、それに到達するための事業計画の合意に至らずに足踏みする、もしくは止む無く業績目標を下げざるを得なかったというケースもあるだろう。すると、もはや現行経営者では状況が打開できないので、トップマネジメントの交代を検討することになるわけである。

 筆者は、日本企業のクロスボーダーM&Aにおける組織・人事面のアドバイザリーサービスに従事し、業界を問わず、デューデリジェンスフェーズからPMIまで、幅広い案件に関与しているが、直近2-3年で手掛けたプロジェクトのうち最も件数が多いのが、買収先経営体制のトランジションに関する事案である。事案により背景の詳細は様々であるが、買収後数年経過し、当初想定していた業績を達成できておらず看過できないリミットに来ている、もしくは、買収時に想定していなかった経済環境の変化(COVID-19の影響や、ESG経営へのシフト等)から、事業構造改革の必要性が高まっていることが、概ね共通した背景と考える。


経営者インセンティブの再設定

 業績が悪化すると、経営者に対して支給されている業績連動型の短期・中長期インセンティブプランに設定された業績目標が未達となり、支給率が下落、場合によっては閾値を割り込み支給が無いということもある。短期的な業績悪化であれば、次年度以降に挽回のチャンスもあるが、業績悪化には長期的な経済環境変化や事業構造上の課題が背景にあり、簡単には業績回復を期待できないこともある。

 こうなると、現行のインセンティブプランのままでは当然ながら買収先経営者に対してリテンション効果や業績向上を動機づけるレバーとしての効果が失われてしまう。単純に業績目標を下げたり、閾値を下げたりすれば、インセンティブの支給は担保でき、一定のリテンション効果は回復できるかもしれないが、業績向上の動機付けという点では不足があり、当然それは親会社として看過できるものではない。

 そこで、経営者インセンティブの再設定を検討する。具体的には、

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