[藤原裕之の金融・経済レポート]

(2018/10/24)

大塚家具とニトリ ~ 明暗分けた変化への対応力

藤原 裕之((一社)日本リサーチ総合研究所 主任研究員)
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苦境の大塚家具と好調なニトリ  ~何が明暗を分けたのか

  大塚家具が大きな岐路に立たされている。

  リーマンショック以降、急速な業績悪化に苦しんでいた同社は、経営権を巡る「お家騒動」を経て2015年に娘の久美子氏が社長に就任したが、業績悪化は止まらず2017年12月決算では過去最悪の赤字に陥った。3期連続の最終赤字が見込まれている同社の2018年4~6月の四半期報告書には、投資家に事業継続リスクを注意喚起する「継続企業の前提に関する注記」が記載された。

  苦境の大塚家具とは対照的に好業績を続けるのがニトリである。度々比較される両社であるが、大塚家具が大幅赤字を計上しているのに対し、ニトリを運営するニトリホールディングスは2018年度2月期決算で31期連続増収増益を達成した。

  同じ家具チェーンでこれだけの差がついた原因はなにか。家具市場が変容する中で両社が取った行動を比較しながら、ひも解いてみる。

図表1  大塚家具とニトリの営業利益



(出所)各社決算


縮小する家具市場  ~3つの構造要因

  国内の家具小売業の売上高は1991年(2兆7千億円)をピークに縮小傾向にある。これにリーマンショックが追い打ちをかけ、売上規模は25年間で6割も減少した(図表2)。
90年代初頭のバブル崩壊とリーマンショックという2大ショックが家具市場を冷え込ませたのは確かだ。しかしより重要な点は、この間に家具市場の構造自体が変化したことにある。具体的には、ライフイベントの減少(社会の変化)、取り付け家具の普及(住宅構造の変化)、消費者のモノ離れ(消費者の変化)の3つの要因が消費者の家具離れを引き起こしている。

図表2  家具小売業の売上高



①ライフイベントの減少  ~縮小する「まとめ買い需要」

  家具(特に大型家具)の需要は、消費者のライフイベントと…


■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)

略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。

※詳しい経歴・実績はこちら
※お問い合わせ先:hiroyuki.fujiwara@research-soken.or.jp

 

 



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