躍進するストリーミングサービス「スポティファイ」 4月3日(米国時間)、音楽ストリーミング配信サービスのSpotify(スポティファイ)がニューヨーク証券取引所に上場した。新たに株式を発行せず、既存の株式を上場させるダイレクト・リスティング(直接上場)で注目を集めた。
スポティファイは定額制(サブスクリプション)の音楽ストリーミング配信でNo1のシェアを誇る。有料会員数は7,500万人(18/3末)で、2番手のApple Music(3,800万人)の倍近い。無料版を含む月間ユーザー数は1.7億人(18/3末)となる。
同社が重視するのはユーザーとアーティストとのセレンディピティ(出会い)にある。スポティファイのアプリにはアーティストなどが編集したプレイリストが多数並んでおり、知らなかったアーティストや新たな音楽と出会うことができる(図表1)。
同社は無料版と有料版(プレミアム)を組み合わせたフリーミアムモデルにこだわっている。無料版では広告が流れ、曲をスキップできる回数、音質面などで一部制限がかけられているが、サービスの素晴らしさは十分体感できる。筆者はAmazon Prime Musicとスポティファイの無料版でストリーミングを楽しんでいるが、スポティファイの利用頻度のほうが多いかもしれない。
スポティファイがけん引するストリーミングサービスはなぜこれだけ注目されるのか、そして音楽市場にどのような影響をもたらすのだろうか。
図表1 スポティファイのホーム画面
加速するストリーミングサービス(CD⇒ダウンロード⇒ストリーミング) 99年以降、世界の音楽市場はCDの売上減少とともに下がり続けてきたが、2012年にようやく下げ止まり、2015年以降は再び成長軌道に乗りそうな勢いを見せている。国際レコード産業連盟(IFPI)によると、2017年の全世界音楽売上は前年比8.1%増の173億ドルとなり2年連続の高成長となった。(図表2)
21世紀初頭までの音楽市場はCDを中心とするパッケージ売上のみであったが、2017年は売上の約半分をデジタル配信で占めている。デジタル配信はダウンロード型が主流だったが2012年に頭打ちとなる。これに代わって急速に伸びてきたのがストリーミングであり、2017年にはパッケージ売上げを上回る売上高を示した(同図)。
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■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。
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