はじめに 日本におけるM&A市場の盛り上がりには目を見張るものがある。もはやM&Aによる事業承継は一般化しているともいえるのではないだろうか。また、事業会社やプライベート・エクイティによる事業承継のみならず、
サーチファンドと呼ばれる、企業経営者を目指す個人が事業承継先を探し出して投資家の支援を得て事業承継を実行するような投資手法も散見されるようになってきている。
本稿では、筆者が約20年にわたり複数の会社を経営してきた経験と、10年以上にわたり経営管理学修士課程(MBAコース)の教員を務めてきた経験をベースに、中小企業を第三者として事業承継した経営者3名にインタビューを行った内容を踏まえ、企業の継承後に行うべき経営アクションの要点を紹介する。
■筆者プロフィール■

土屋 繼(つちや・けい)
1971年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了(MBA)。コンサルティングファーム A.T.カーニーを経て、1999年よりITベンチャー業界へ。さまざまなベンチャー企業に関わり2度のIPOを経験。東証プライム上場サイボウズ子会社代表を経て、2011年より中堅総合内装会社の代表取締役に就任。2014年に博報堂の傘下に入り、2016年に退任。その後、経営大学院にて社会人教育に携わりつつ、黒鳥社を起業。同時に、PEファンド傘下の創業50年となる日本サインの企業再生にも経営者として従事。2024年には企業・事業再生をITからも支援するコンサルティング会社KT Partnersも起業。現在、3社の経営に当たりつつ、複数社の社外役員を務め、大学院・大学の教壇にも立っている。