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[【DD】グローバルM&Aにおける非財務リスクへの対応(クロール・インターナショナル)]

(2019/05/09)

【第6回】 デュー・ディリジェンスの限界

村崎 直子(クロール・インターナショナル・インク シニアアドバイザー)

  これまでは、M&Aの際には事前に様々な非財務リスクを把握するためのデュー・ディリジェンスが重要であることについてご説明してきました。すでにリスク・デュー・ディリジェンスの必要性・重要性、そしてその結果の活用方法についてはご理解いただけたかと思います。

  しかしながら、実はリスク・デュー・ディリジェンスはM&Aにおけるリスクマネジメントの上で万能というわけではありません。どんなに綿密なデュー・ディリジェンスを行った上でディールを行ったとしても、実際には後になって深刻なリスクが顕在化することもあります。

  最終回では、そういったリスク・デュー・ディリジェンスの限界についてご説明するとともに、リスク・デュー・ディリジェンスを行った上でまたしても大きなリスクが顕在化する可能性を少しでも減らすために、どのような手当をしておくべきかについて解説したいと思います。

1.リスク・デュー・ディリジェンスに限界があるわけ

  例えばこういった例を考えてみてください。東南アジアのある企業A社を買収しました。しっかりとリスク・デュー・ディリジェンスを実施しましたが、後になって以下のような困ったことが起きました。

 ア)A社は、社長の内縁の妻がオーナーである会社B社との間に取引があり、しかも同業他社に比べて高い金額でB社から物品を仕入れていた。B社は売上の一部をA社の社長にキックバックしていた。
 イ)架空の企業と長年取引しており、この架空企業に支払った金はすべてA社CFOの口座に振り込まれていた。
 ウ)A社が使っていたエージェントが、A社の業務のために政治家に賄賂を贈っていた容疑で現地の警察当局に逮捕され、A社にも捜査のメスが入った。
 エ)A社に使途不明金が見つかり、調査してみたところ、従業員が会社の経費を不正に流用しており、その一部が反社会的勢力に流れていた。


  上記のうち、ア)の例はいわゆる親族間による利益相反取引です。なぜ、リスク・デュー・ディリジェンスではわからなかったのでしょうか。それは、買収前のデュー・ディリジェンスの過程では、一つ一つの取引にまでチェックをする時間もリソースもなく、また、取引先のリストをみて、このリストにある会社の社長のうち、誰がA社の社長の親族なのかというところまでを遠い親戚や内縁関係の家族までチェックすることはなかなか現実的に難しいからです。イ)についても同様です。各取引先企業をM&A前の限られた時間で一つ一つ現地でフィールド調査するというのは現実的ではなく、せいぜい取引金額の大きい取引先のみのチェックを行うくらいしかできないものですので、多少の取引金額しかないような企業だと、稼働実態も含めて事前にチェックするのは無理と言わざるをえません。ウ)についてもFCPA違反の事例として頻繁に出てくるような事例ではありますが、取引金額の大きなエージェントであればともかく、そうではない場合には、なかなかデュー・ディリジェンスの段階でレッドフラッグを立てるのは難しいことが多くあります。デュー・ディリジェンスの段階で特定のエージェントに支払う金額が多いなどとして懸念が呈されることもありますが、かといって、クロージング前に徹底的に資金の流れまで調査するということは極めて困難です。また、エ)も同様で、一人一人の従業員の経費使用状況までは事前のデュー・ディリジェンスではチェックすることは現実的ではありません。

  すなわち、リスク・デュー・ディリジェンスは、相手の提出してくる資料に依拠せずに外部から客観性を担保した調査を実施するという性格上、すべての社内データを綿密に分析しなければわからないようなリスクについては発見するのが困難であるという限界があるのです。

  となると…



■ クロール・インターナショナル・インク

■筆者経歴
村崎直子(むらさき・なおこ)
クロール・インターナショナル・インク シニアアドバイザー。
大学卒業後、警察庁に入り、静岡県警捜査第二課長、兵庫県警外事課長を歴任。2008年ベイン・アンド・カンパニー・ジャパンを経て、10年クロール日本支社に入社。15年日本支社代表を経て、18年9月より現職。M&Aの際のデュー・ディリジェンスのほか、不正調査などを多く手掛ける。京都大学法学部卒業、ハーバード大学ジョン・F・ケネディ行政大学院修士課程修了。

 

 


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