[M&Aフォーラム賞]

2014年11月号 241号

(2014/10/15)

第8回 M&Aフォーラム賞が決定――M&Aフォーラム賞『RECOF賞』などに4作品が受賞

  M&Aフォーラムの設立の目的は、M&A活動が、わが国経済の持続的成長、あるいは産業・企業の成長・発展に寄与するという考えに基づき、わが国におけるM&A活動の普及・啓発を図り、あわせてM&Aに精通した人材を育成することを目的として、地道な活動を続けております。

  私共の行っている活動は、2つの柱から成り立っています。その1つの柱は、M&A人材育成のための『M&A人材育成塾』と称する研修事業です。講師にはM&A業界の第一人者の方々をお願いしており、2006年から今日までに開催された講座数は27講座、ご活用された企業数は270社を超え、受講者は、延べ850名余りのご参加を頂いています。中でも『M&A実践実務講座』は、M&Aの初期研修に最適とご好評を頂いており、首都圏のみならず、地方からのご参加も頂戴する中心的な講座となっています。

  もう1つの柱は、今回で8回目を迎えた、M&Aフォーラム賞という顕彰制度です。わが国のM&Aの普及啓発に資する優れた書籍、研究論文に対して表彰する制度であり、レコフの全面的なご支援を得て毎年実施しております。毎回その年のわが国のM&Aの実情を反映した作品が応募されており、受賞作品を一覧するとわが国のM&Aの発展の状況が判るという側面があります。

  作品審査は選考委員会で行われ、審査委員長には、第5回から日本経済研究センターの岩田一政理事長にお願いしており、今回も懇切なるご講評を頂いております。今回も、これまでと同様、いずれも大変レベルの高い作品の応募を頂き、特に受賞作品は、いずれも甲乙つけがたく、選考委員の先生方を例年以上に悩ませたと聞いております。

  お忙しいところ、岩田委員長を始め、審査の労を賜りました選考委員の先生方には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

  M&Aフォーラムも設立から8年余りが経過し、他方、M&Aを取り巻く環境も好転、更なる活性化も予想されています。今後とも着実に実績を積み上げたいと思っております。皆様には、本フォーラムの趣旨をご理解賜り、より一層のご支援の程お願い致します」

【受賞者の言葉】

■芦澤美智子(横浜市立大学 国際総合科学部 准教授)
芦澤美智子氏「M&Aフォーラム賞は、企業再生M&A研究をすると決めた時からの私の目標でしたので、今回の受賞を本当に嬉しく思っております。
  私のM&Aとの出会いは、駆け出しの会計士だった頃に、日米英の大型M&Aの買収監査チームにアサインされた時のことでした。狭いデータルームの中にスケールの大きな戦略的議論が飛び交い、こんな世界があるのかと衝撃を受けたことを昨日のことのように思い出すことができます。そしてその後、産業再生機構でカネボウ再生案件のマネジャーを務めました。その時はデータルームから出て現場に近いところで仕事をし、M&Aという荒波の中で繰り広げられる人間模様に圧倒されました。
  そんな風に経験を積むに従い、M&Aの世界では財務や法務ほどに戦略面での研究が蓄積されていないことに気づきました。もちろん経験豊かな人にはわかっている定石も、研究として蓄積されていないと広がってはいきません。もっと多くの人が自信を持ってM&Aに取り組めるように、今後も微力ながらM&A分野の研究に貢献していきたいと思っています。
  本研究にあたっては、恩師や仲間、そして家族にとても助けてもらいました。また前職時代の上司や同僚からは、励ましと示唆に富む助言をたくさん頂きました。この場を借りて改めて御礼申し上げたいと思います。ありがとうございました」

■飯田秀総(神戸大学 大学院法学研究科 准教授)
飯田秀総氏「このたびは、M&Aフォーラム賞奨励賞『RECOF奨励賞』を受賞し、光栄に存じます。M&Aに関する会社法・金融商品取引法の研究をライフワークの1つとする者として、大変に励みになりました。実は、この賞を受賞するのは今回で2度目のことでありますが、今後も研究を継続して行い、3度目、4度目が続くように精進したいと思います。今回の作品では、株主間の利害の調整とか、株主の意思決定などを主たる分析の対象としたわけですが、株主を対象とする研究の必要性はまだまだたくさん残されており、この研究の終わりは全くみえていません。また、今後は、役員の役割や、より視野を広げて、企業法全体の観点からのM&A法制度のあり方も研究していきたいと考えています」

■梅谷眞人(富士ゼロックス株式会社 知的財産部渉外グループ長)
梅谷眞人氏 宍戸 善一氏 福田 宗孝氏「本書の共著者は、1998年に東京大学大学院において江頭教授が主宰したジョイント・ベンチャーの研究に関する演習で出会った。
  宍戸教授は、母校の教壇に凱旋し、JV研究の第一人者として勇躍ゼミを開始したのであるが、待ち受けていたのは、ひと癖ある社会人大学院生の群れであった。研究者の意見に対して、遠慮を知らない実務家が容赦ない論戦を挑み、さぞかし辛い思いをしたであろうが、そこでキレないところが宍戸教授の偉い(本人談)ところである。大学院修了後暫くして、JVに関する最高の本を共著で出そうという申し出があり、2000年から本書の出版を目的とする研究会をスタートした。
  最初の数年は、2次会で酒を酌み交わしながら自由に語り合うことが主目的になりそうであったが、毎月、研究成果をプロジェクターに投影して激論を交わし、その場で3人の意見を統一して執筆していく方式でアウトプットを積み重ね、12年を経て完成した。3人にJV研究をここまで続けさせたMVPは、赤坂『むさし坊』店長のひふみさんかもしれない。受賞のお祝いをする店は、決まっている」
 

■寺前慎太郎(同志社大学 大学院法学研究科私法学専攻 博士後期課程3年)
寺前慎太郎氏 「このたびは、第8回M&Aフォーラム賞選考委員会特別賞をいただき、大変光栄に存じます。選考委員の先生方ならびに関係者の皆様には、厚く御礼申し上げます。本論文は、企業買収の分野でわが国の法ルールに多大な影響を与えているデラウェア州の判例法理から示唆をもとに、支配株主による締出しの場面での特別委員会の構成や権限について検討したものでございます。本論文のテーマは、法ルールの内容以上にM&A実務のあり方と大きく関係しており、それに精通していない私が取り組むには適切ではないのではないかと執筆途中で思い悩むことも多々ございました。そのため、本論文には、理論と実務の両面において多くの課題が残されていると存じます。今後の研究を通じて、その課題を少しでも解決していきたいと考えております。今回の受賞を励みとして、わが国におけるM&Aの発展に少しでも貢献できるように、引き続き研究に精進して参りたいと存じます」

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