[対談・座談会]

2023年5月号 343号

(2023/04/11)

[座談会] 【現場で役立つ】ベンチャーM&Aのバリュエーション、PMI、契約交渉実務のポイント

【出席者】(五十音順)
石田 渉(森・濱田松本法律事務所 弁護士)(司会・進行)
鈴木 二功(デロイト トーマツ ベンチャーサポート スタートアップ事業部 M&Aアドバイザリーリーダー)
中村 祐樹(デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 バリュエーション&モデリングシニアヴァイスプレジデント)
  • A,B,EXコース
左から中村祐樹氏、石田渉氏、鈴木二功氏

左から中村祐樹氏、石田渉氏、鈴木二功氏

<目次>
自己紹介
  1. 直近のベンチャーM&Aの動向
    • エグジットの選択肢として高まりつつあるM&A
    • M&Aは成長のためのエントランス・入口
  2. ベンチャーM&Aの進め方
    • ベンチャー企業と大企業等のマッチングを生み出すオープンイノベーションイベント
    • ベンチャーM&Aはゴールした後が始まり
    • 相対交渉か入札か
    • 事業会社の意思決定では新しい仕組みやルール作りも必要
  3. ベンチャーM&Aにおけるバリュエーション
    • バイサイドとセルサイドのバリュエーションの差は必ずでてくる
    • バリュエーションの評価方法
    • ベンチャーの事業計画の検証ポイント
    • ベンチャーバリュエーションの割引率の考え方
    • マジョリティディール、マイノリティディールでのバリュエーションの考え方
    • VC法の用い方
    • ベンチャーM&AのバリュエーションでのCompsの用いられ方
    • マルチプルを決定するときのポイント
    • 赤字状況のベンチャー企業が買収対象になる場合のバリュエーションの特徴
    • のれんに関する留意点
    • M&Aの価値評価 ~買い主側の意思決定における留意点(善管注意義務とガバナンス)
    • 償還期限が迫るファンドの動向
  4. ベンチャーM&Aにおけるスキームとエグゼキューション
    • アーンアウトの留意点
    • アーンアウト以外のインセンティブ手段
    • ストックオプション(SO)の評価手法や考え方
    • ベンチャーM&A実行に伴う留意点 ~多数の利害関係者の権利関係をどのように整理・調整するか
    • DDプロセスや契約の作り込みは相応に必要
  5. PMI
    • モニタリングチーム(担当窓口)の設置
    • 定例会議とKPIの工夫
    • 経営がうまくいかなかった場合の経営陣への対応
  6. 最後に
    • エグジットのマーケット環境拡大が急務
    • ベンチャーM&Aのテクニカルな手法の浸透はこれから
    • 人材のすそ野は広がっている
自己紹介

石田 「2022年6月に閣議決定された『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画』において、ベンチャー投資の実現が主要課題として示されました。そこでは、ベンチャー企業の育成・投資やIPOのみならず、M&Aや大企業とのオープンイノベーションの推進が重要な政策課題に掲げられています。ベンチャーM&Aを自社の成長戦略として捉える事業会社、事業拡大の加速策・エグジット戦略の1つとしてM&Aを検討するベンチャー企業を中心に、ベンチャーM&Aの取り組みが活発化してきているように感じます。他方、ベンチャーM&Aの場合、バリュエーションや譲渡対価の考え方、スキームや契約上の論点等について、通常のM&Aとは異なる対応・工夫が必須となります。

 本日は、ベンチャーM&Aの最前線で活躍されているデロイト トーマツ ベンチャーサポートの鈴木二功さん、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーの中村祐樹さんにご参加いただき、『ベンチャーM&Aのバリュエーション、PMI、契約交渉実務のポイント』についてお話をお聞きしていきたいと思います。司会は、私、森・濱田松本法律事務所の弁護士石田渉が行います。

 私から自己紹介させていただきます。私は森・濱田松本法律事務所の東京オフィスにて国内外のクライアントに係る企業法務全般を取り扱っております。ベンチャーM&Aに関しては、2016年から2018年に米国留学した後、外部のコンサルティング・FAファームにてスタートアップに関する事業戦略・資本政策・エグジット等をサポートした経験・知見も活かし、事業会社側・ベンチャー側・VC(ベンチャー・キャピタル)等の投資家側という様々な立場のクライアントをサポートしております。よろしくお願いします。

 それでは、鈴木さんから自己紹介をお願いします」

鈴木 「デロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)の鈴木二功と申します。DTVSはデロイト トーマツ グループの社内ベンチャーとして立ち上がったイノベーションファームで、ベンチャー支援や新規事業創出支援、官公庁、自治体との連携によるイノベーター育成支援を軸に事業を展開しています。私自身は、2018年にDTVSに入社しまして、業界やフェーズを問わず、年間300人超の起業家、経営者とお会いしています。専門はベンチャーM&Aですが、並行してベンチャー企業の経営者支援を行っています。具体的にはビジネスモデルの構築や資本政策のアドバイス、ハンズオン支援なども行なっています。どうぞよろしくお願いします」

石田 「よろしくお願いします。では中村さんお願いします」

中村 「デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー(DTFA)の中村祐樹と申します。DTFAは会計系のM&Aアドバイザリーとしてプレ M&AからPMIまで一気通貫でM&Aの業務を提供しています。私は銀行及びアセットマネジメント会社を経て2012年に入所しまして、主にバリュエーションを専門としてM&Aの支援や助言を行なっています。バリュエーションについては10年程の経験になりますが、主にディール関連を中心に、ベンチャー投資の評価やカーブアウトTOB、ジョイントベンチャー(JV)の組成等の案件を多く手掛けております。本日はよろしくお願いいたします」

1. 直近のベンチャーM&Aの動向

エグジットの選択肢として高まりつつあるM&A

石田 「日本では、2022年を『スタートアップ創出元年』とし、スタートアップへの投資額を5年で10倍にする『スタートアップ育成5か年計画』が発表されました。ベンチャーM&Aについては、エグジット手法としてのコスト・時間軸・スキームの柔軟性等のメリットがあることもあり、オープンイノベーション税制によるM&A促進・未上場株のセカンダリー市場整備等、様々な後押しの動きが活発化してきています。他方、欧米と比べると日本のエグジット手法は依然としてIPO中心であり、ベンチャーM&Aの件数・規模にはまだまだ伸びしろが大きいと感じています。鈴木さん、ベンチャー企業を取り巻く業界の現場におられる立場として、直近のベンチャーM&Aの動きについてはどのように感じられていますか」

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