[特集インタビュー]

2014年3月号 233号

(2014/02/15)

日本における「産業エコシステム」確立の後押しをするのが我々のミッション

小宮 義則(産業革新機構 専務執行役員)
  • A,B,EXコース

小宮 義則(こみや・よしのり)

投資案件検討の判断軸

-- 産業革新機構(Innovation Network Corporation of Japan:以下INCJ)は、政府と民間の出資によって、2009年7月に設立されました。日本が持つ産業資源の潜在力を最大限に引き出して次世代を担う産業のプラットフォームを構築し、日本経済の持続的発展につなげる次世代産業の育成を目的としてこれまでに約60件近くの投資実績を積み上げています。

  投資先は多分野にわたっていますが、最近は大学や大企業の技術シーズを生かしたベンチャーに対する投資や、ベンチャー企業に投資するファンドへの出資を拡大しています。これらのベンチャーの育成支援は、アベノミクスの3本目の矢である「成長戦略」の重要な柱として期待されていますが、まず産業革新機構のベンチャー投資に関する基本的な考え方についてお聞かせください。

  「INCJは、2009年に『産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法』(以下、産活法)(現・産業競争力強化法)に基づき運営を開始しました。法律に基づき、INCJの投資は4つのカテゴリーに分類されます。具体的には、『先端的な基礎技術の事業展開』『ベンチャー企業等の事業拡大』『事業部門・子会社の切り出し・再編』『積極的な海外展開』です。

  このなかで、『事業部門・子会社の切り出し・再編』に区分されるジャパンディスプレイやルネサスエレクトロニクスなどへの投資は、投資金額が大きいこともあり、大きく報道されています。一方、『先端的な基礎技術の事業展開』『ベンチャー企業等の事業拡大』といったベンチャー投資については、設立当初よりINCJのミッションと照らし合わせながら投資を積み重ねてきました。また、政府から成長戦略によってベンチャー投資をさらに推進していくという政策も打ち出されましたので、INCJとしてもベンチャー投資に係る体制を一層強化しています。こうしたことが2013年からベンチャー投資件数が大幅に増加してきた理由です。

  ベンチャー投資を含めて、当社の投資判断軸は、『事業計画の実現可能性』『投資収益性』に加え、『投資インパクト』の3つです。『投資インパクト』を言い換えるならば、産業構造を転換させるような社会的な影響ということになるでしょう。

  INCJの重要なミッションのひとつには、効果的なリスクマネーの供給によってベンチャー企業を育成し、日本の起業立国としてのプレゼンスを確立することにあります。グローバル競争に勝ち残れる成功事例の創出を通じて、企業の内部と外部のアイデアを組み合わせて革新的で新しい価値を創り出す『オープンイノベーション』の活性化を図っていきたいと考えています。このため、INCJは単に資金を出すだけではなく、日本にベンチャー企業のエコシステム(企業のイノベーションのために新しい成長サイクルをつくっていくような生態系システム)をどのようにして構築していくかという観点で投資を行っています。また、INCJの資金は、民間VCの補完機能を有しています」

  

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