[Webマール]

(2024/09/24)

M&A担当者のための企業結合審査の基礎知識[前編]

――公正取引委員会による審査の視点等と最近の注目案件について

久保 文吾(公正取引委員会事務総局 経済取引局企業結合課 企業結合調査官(主査))
宮原 信二(同 企業結合調査官)
田中 志奈(同 企業結合調査官)
  • A,B,C,EXコース
<目次>
  • はじめに
  • 第1 M&A及び企業結合審査に関する最近の動向
    • 1 M&Aに関する最近の動向
    • 2 企業結合審査に関する最近の動向
  • 第2 M&A担当者に求められる慎重な事前検討
  • 第3 公取委による企業結合審査の視点等
    • 1 企業結合審査の基本的な流れ
    • 2 セーフハーバー基準該当性の確認(ステップ3-1)
    • 3 企業結合が競争を実質的に制限することとなるメカニズム(ステップ3-2)

  • 第4 問題解消措置(ステップ4)
    • 1 問題解消措置の類型
    • 2 外部の第三者機関(トラスティ)による問題解消措置の履行監視等について
    • 3 過去5年間に問題解消措置が付された企業結合事例
  • 第5 2023年度の注目案件(大韓航空によるアシアナ航空の株式取得)
    • 1 事案の概要
    • 2 旅客事業について
    • 3 貨物事業について
    • 4 問題解消措置
  • おわりに
はじめに

 公正取引委員会(以下「公取委」という。)は2024年7月、2023年度における主要な企業結合事例の審査結果をとりまとめて、公表した(令和5年度企業結合事例集)(注1)。企業結合事例集は、公取委による企業結合審査の透明性を確保し、予見可能性を向上させることを目的として、公取委が毎年度公表しているものである。

 本稿では、M&A及び企業結合審査に関する最近の動向を概観した上で、公取委における審査の視点等を紹介し、2023年度の注目案件として大韓航空によるアシアナ航空の株式取得のケースを紹介する。本稿が、読者の企業結合審査への理解を深めるきっかけとなれば幸いである。

 なお、本稿中、意見にわたる部分は、筆者らの個人的見解に基づくものである。


■久保 文吾(くぼ・ぶんご)
2007年弁護士登録、19年King's College London修士課程修了(LL.M. in Competition Law)。梶谷綜合法律事務所、Van Bael & Bellis法律事務所(ブリュッセル)、日本製鉄株式会社法務部国際法務室勤務を経て2022年10月から現職。著書:『事例シミュレーション 新債権法の実務-弁護士・裁判官の視点に基づく解釈と運用』(共著)(ぎょうせい、2023)、『会社法関係法務省令 逐条実務詳解』(共著)(清文社、2016)、『企業再編の理論と実務―企業再編のすべて』(共著)(商事法務、2014)ほか。公正取引委員会においては、マイクロソフト・コーポレーション及びアクティビジョン・ブリザード・インクの統合、アドビ・インク及びフィグマ・インクの統合、株式会社大韓航空によるアシアナ航空株式会社の株式取得等、国際的なM&Aの審査を多数担当。

■宮原 信二(みやはら・しんじ)
2010年公正取引委員会事務総局入局。消費者庁出向、経済取引局総務課企画室、中部事務所下請課下請取引調査官、審査局第二審査審査専門官、取引部企業取引課企画係長を経て、2022年7月から現職。株式会社大韓航空によるアシアナ航空株式会社の株式取得に関する審査等を担当。

■田中 志奈(たなか・ゆきな)
2014年公正取引委員会事務総局入局。経済取引局企業結合課、審査局第二審査、東北事務所下請課下請取引調査官を経て、2024年7月から現職。マイクロソフト・コーポレーション及びアクティビジョン・ブリザード・インクの統合に関する審査、株式会社大韓航空によるアシアナ航空株式会社の株式取得に関する審査等を担当。

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