クラフトフーズによるキャドバリー買収の事例のように企業買収後の経営が短期主義的経営に陥る弊害が指摘されている。日本では近年、買収への対応方針(買収防衛策)の導入が減少傾向にあるが、欧米では買収防衛策が再評価されている面もある。英国は買収規制を強化し複数議決権株式を容認している。EUでも同株式や、長期保有株主に複数議決権を与えるLVS(Loyalty Voting Structures)が活用されている。日本ではM&A推進が進む一方、複数議決権株式の利用はかなり限定的だが、欧米の動向を踏まえ、中長期的な企業成長の観点から同様の制度導入を検討することも一考に値するのではないか。
複数議決権株式への着目 ニデックによる牧野フライス製作所への
TOB提案は、「
同意なき買収」の事例が日本でも散見されるようになる中で大きな注目を集める事案であったが、ニデックがTOBを撤回するという幕切れとなった。本稿は当該事案について解説するものではないが、諸外国における同意なき買収のあり方と複数議決権株式を巡る状況について、この機会に整理してみたい。
日本の上場企業の「買収への対応方針(買収防衛策)」導入は、2008年のピークには600社弱に到達したが、足元は300社弱まで減少しているとみられる(レコフデータ調べ)。コーポレートガバナンス改革の下で、M&Aを行いやすい環境整備がどんどん進展し、機関投資家が説明責任を重視するスタンスに転じていることが背景にある。
同意なき買収が肯定されるのは、