[藤原裕之の金融・経済レポート]

(2019/05/29)

高級パンブームの表と裏 ~ 苦戦する大手ベーカリーチェーン

藤原 裕之((一社)日本リサーチ総合研究所 主任研究員)
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息の長い高級パンブーム

  高級パンブームが続いている。素材や製法にこだわった食パン専門店には連日のように順番待ちの行列ができている。筆者も先日、圧巻の品揃えとこだわりぬいた素材で有名なベーカリー「365日(東京代々木八幡)」に足を運んだ。開店から30分でお目当てのクロワッサンが売り切れるなど、ブームの熱量を感じた。

  高級パンブームの出発点は2013年にさかのぼる。ブームをけん引する大阪発祥の「乃が美」、「セントル ザ・ベーカリー(東京銀座)」、筆者が驚嘆した365日も2013年にオープンしている。セブン-イレブンのヒット商品「金の食パン」が発売されたのも2013年だ。高級パンブームの影響はパンの購入価格からも確認できる。家計が購入するパンの価格は高級パンブームに呼応するように2013年から上昇傾向にある(図表1)。

  移動販売する焼き立てのメロンパンなど、過去にもパンブームは何度かあったがそれほど長続きしなかった。今回の高級パンブームは6年経過しても衰える兆しはなく、これまでにない息の長いブームとなっている。

図表1  上昇するパンの購入価格


ストーリー性を求める消費者がブームを支える ~高級パン店は休日に行く


  高級パンブームがこれだけの盛り上がりをみせている背景は何だろうか。筆者はここ数年の食のストーリー性を求める消費パターンが影響しており、ブームの枠を超えた構造的な現象と捉えている。

  その時々の場面に応じて様々な顔をみせるのが今の消費者だ。コーヒーを例に取ると、仕事で時間に余裕のない平日はコンビニで100円コーヒーを購入し、休日になると本格コーヒーを提供するカフェで豆や産地の違いを味わう。利便性とストーリー性の両方を求めることで消費行動にメリハリが生まれている。ここ数年、平日と比べて土日休日の買い物時間が長くなっているのもこのメリハリ化が関係している(図表2)。時間節約モードとなる平日はコンビニで素早く効率的に買い物を済ませ…


■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)

略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。

※詳しい経歴・実績はこちら
※お問い合わせ先:hiroyuki.fujiwara@research-soken.or.jp

 

 



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