観光宿泊業のダメージは甚大
前回はWith-Afterコロナの未来像について音楽エンタメ業界を取り上げて考察した。そこからは朧気ながら「オンライン」と「地方」というキーワードが浮かび上がった。今回は第二弾として観光宿泊業界を取り上げ、With-Afterコロナの世界がどうなるか考察したい。
周知のようにコロナ禍で観光宿泊産業が受けたダメージは甚大だ。家計の消費支出の中で観光宿泊関連支出は特に減少率が大きい。国内パック旅行費は前年と比べて8割近く減少している。5月の国内宿泊者数は前年同月比83.5%減となり、比較可能な2011年4月以降の最悪水準を下回った(図表1)。
図表1 宿泊者数の推移

求められる3つの視点
緊急事態宣言は解除されてもワクチンが開発・実用化されるまで危機モードは継続する。今までのビジネススタイルを続けても需要は戻らないのは明らかだ。打つべきは今までの観光ビジネスにはない視点で新たな市場を開拓することにある。
筆者が指摘するまでもなく、星野リゾート代表の星野氏など突出したビジネスセンスを持つ経営者は新たな視点を持って有効な手を打ち出しはじめている。足元の現状をみると暗澹たる気持ちになるが、星野氏のように新たな視点を持って動き続ければ事態を好転させることは十分可能だ。
① オンラインの活用
ではWith-Afterコロナで観光宿泊業界に求められる新たな視点とは何なのか。一つ目はオンラインの活用だ。すでにHISなど大手旅行会社は自宅から参加できるオンライン・ツアーを実施している。移動の自粛で行けなくなった観光スポットなどを現地のガイドがリアルタイムで案内する。オーロラ観光で有名なカナダの「ホワイトホースの魅力を語る」というオンライン・ツアーでは、オーロラや野生動物の魅力を現地スタッフが熱く語る。質疑応答など双方向のやりとりもあるため、結構盛り上がるようだ。
オンライン・ツアーへの参加費は無料のものから高くても1万円前後である。リアル・ツアーに代わるような市場規模は期待できないが、マーケティングとしての意味合いは大きい。...
■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社、一般社団法人日本リサーチ総合研究所を経て、2020年4月より合同会社センスクリエイト総合研究所代表。株式会社東京商工リサーチ客員研究員を兼任。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。