[Webマール]

(2024/01/10)

【インタビュー】 徹底的な事業ポートフォリオの見直しが最重要

加藤 克巳(ベイン・アンド・カンパニー シニア アドバイザー)
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ベイン・アンド・カンパニー 加藤克巳シニア アドバイザー

ベイン・アンド・カンパニー 加藤克巳シニア アドバイザー

アシックスの取締役常務執行役員グローバルマーケティング統括部長、ASICS Europe B.V代表取締役社長を務め、2社のM&Aに関与。現在、ベイン・アンド・カンパニーでシニア アドバイザーを務めつつJTBの社外取締役でもある加藤克巳氏に、M&A等についての考え方を聞いた。
「集権と分権」のトレードオフの関係

―― 自身とM&Aとの関わりについて教えてください。

 「アシックスでM&Aに関わるようになったのは2010年で、最初の案件は高級アウトドア用品を手掛けるスウェーデンのホグロフスの買収でした。その後、アメリカのフィットネスキーパーというwebアプリケーションのランキーパーを提供する企業の買収にも携わりました。

 2004年から2010年までの間、アシックスヨーロッパで働き、最終的にはASICS Europe のPresident/COOを務めました。M&Aでは、主に事業面でのデューデリジェンスと、それに続くPMIの仕事に関わりました」

―― アシックスにとっての2社のM&Aの位置づけは当時、どのようなものだったのですか。

 「フィットネスキーパーの買収は、同社アプリのユーザー層を取り込むことでのブランド価値向上を目的としていました。一方で、ホグロフスの買収は、アウトドア分野を補完することでプロダクト・ポートフォリオを強化するという明確な意図がありました。

 プロダクト・ポートフォリオの拡充は、隣接するパフォーマンススポーツ市場とアウトドア市場をつなぐという戦略的な動きでした。特にアウトドア市場は文化的な違いがあり、アシックスはグローバルな視点で競争力のあるブランドを求めて買収しました」

―― M&Aの実体験から学んだことは。

 「基本的には買収後に集権と分権のトレードオフの関係というものがどこでも発生すると思います。買収側は当然ながら経営上機能統合を考えますが、買われた側は、『はい、お願いします』とは言いません。

 つまり、PMIの段階において、集権と分権の間のバランスが非常に重要であるということです。買収を行った側は統合を進めることを望んで、買収された側は、これまでの自社の文化や経営方法を守りたがることが多々あります。これにより、両者の間にはトレードオフの関係が生まれ、合意形成と折り合いをつける過程が不可欠になります。

 この過程は企業や経営層によって異なるため、一概に正しい方法はありませんが、相互協力と徹底的な対話が必要だと思いました。さらに、事業会社特有のM&Aの難しさについては、ファンドとインダストリアルオーナーが持つマネジメントスタイルの違いもあります」

シナジーや長期的な価値の創出

―― 事業会社のM&Aならではの難しさはありますか。


■加藤 克巳 (かとう・かつみ)
38年間にわたりアシックスに勤務し、取締役常務執行役員グローバルマーケティング統括部長、ASICS Europe B.V代表取締役社長、HAGLÖFS AB代表取締役会長を歴任。スポーツ、アウトドア、アパレル、ライフスタイル業界におけるリテール、セールス・マーケティング、M&A等で豊富な知見を有する。立教大学法学部卒業。ベイン・アンド・カンパニーのシニア アドバイザーであり、JTB社外取締役、マッシュホールディングス特別顧問、KEEN Inc(USA) Board Advisor。

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