[Webマール]

(2025/01/17)

【連載】第2回 2025年、M&Aの展望――化学業界

眞野 薫(ボストン コンサルティング グループ マネージング・ディレクター&パートナー)
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第1回では、日本の事業会社がM&Aを推進する主な目的となる3つのテーマについて解説した。本稿では、個別業界編の第1弾として日本の化学企業が抱える経営課題をTSR(Total Shareholder Return、株主総利回り)の視点から整理し、今後進展が予想できるM&Aの類型、およびM&A実行に向けたハードルと対応策について解説したい。
1. 日本の化学企業の経営課題

 ここでは、日本の化学企業の抱える経営課題について、昨今注目を集めるTSRをものさしとして、世界の各地域との比較を通じて明らかにしていきたい。TSRは一定期間における「キャピタルゲイン」(株価の値上がり益)と「インカムゲイン」(配当等のキャッシュフロー)の総和であり、株主にとっての最終的なリターン、ひいては株主価値創造の全体像を示す指標である。BCGでは、キャピタルゲインを利益成長とバリュエーションマルチプル(EBITDAマルチプルなどの株価倍率。以下、マルチプル)の変化に分解し、インカムゲインを表すフリーキャッシュフロー利回りを加えて企業の価値創出を分析する枠組みを用いて業界・企業分析を行っている。

 世界の化学企業は、さまざまな課題に直面しながらも、過去5年の平均TSRを2022年(2018~2022年)の7%から2023年(2019~2023年)には12%へと上昇させた。図表1は、地域とサブセクターのマトリクスで、それぞれのパフォーマンスを示したものだ。地域としてはインドや韓国、サブセクターでは産業ガス、スペシャリティケミカル(特定分野)のパフォーマンスが特に高い。



■ 筆者履歴

眞野 薫(まの・かおる)

眞野 薫(まの・かおる)
M&A支援を専門とするBCGトランザクション&インテグレーションチームのコアメンバー、およびBCG産業財・自動車グループおよびコーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。防衛大学校理工学専攻数学物理学科卒業、北陸先端科学技術大学院大学知識科学修了。日系・グローバルコンサルティングファーム、およびM&A専門ファームなどを経て現在に至る。約25年のコンサルティング経験を有し、化学・素材業界を中心に、M&A・組織再編・カーブアウトを絡めた事業ポートフォリオの再構築や、新規事業戦略策定などのプロジェクトを数多く手掛ける。

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