2024年、日本のM&A市場は過去最高の取引件数を記録した。このモメンタムは2025年も続き、日本のM&Aは増加傾向が続くと予想している。そこで本稿では、2025年のM&Aの主なテーマとなるビジネストピックと、それを実行する上での日本企業の典型的な課題について、そのエッセンスをお伝えする。
2024年、日本のM&A市場は過去最高の取引件数を記録し、非常に活況な1年となった。日本でM&Aの件数が増えている背景には
アクティビストの活動の活発化、
PBR1.0倍の問題、経済産業省の指針など、さまざまな理由がある。しかし本質的には、日本企業の成長意欲が引き続き高いことと、日本企業にとって戦略上の打ち手のひとつとしてM&Aという手段が一般化してきたことが下支えとなっていると考えられる。このモメンタムは2025年も続き、日本のM&Aは増加傾向が続くと予想している。
M&Aのテーマは業界ごとに異なるが、俯瞰的に見れば、日本の事業会社(特に大企業)がM&Aを推進する主な目的として「事業開発」「グローバル展開」「事業再編」という3つのテーマが挙げられる。本連載では、6回にわたり各業界の課題とM&Aの特徴について解説していくが、ここではまずその全体像をお伝えするため、3つのテーマとその実現に向けた課題について解説したい。
「事業開発」は2025年もM&Aをドライブするホットテーマ 最初のテーマは「事業開発」だ。2024年も事業開発を企図した多くの異業種買収が行われた。
■ 筆者履歴
横瀧 崇(よこたき・たかし)
BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループの日本リーダー。M&A支援を専門とするBCGトランザクション&インテグレーションチームも主導する。早稲田大学第一文学部卒業。ソフトバンク株式会社、グローバルコンサルティングファームを経て現在に至る。約20年にわたり幅広い業界のM&A、アライアンス関連の支援に携わってきた。加えて、物流、エネルギー、ヘルスケア、金融などの多くの業界で業界再編に関わる支援経験を保有。共著書に『BCGが読む経営の論点2024』(日本経済新聞出版)。