[Webマール]

(2025/01/31)

【連載】第4回 2025年、M&Aの展望――運輸・物流業界

松尾 成晃(ボストン コンサルティング グループ マネージング・ディレクター&パートナー)
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2024年は、運輸・物流業界において注目すべきM&Aが見られた年だった。グローバルではデンマークのDSVによる独DBシェンカーの買収、日本国内においては、SGホールディングスによる低温輸配送企業C&Fロジホールディングスをめぐっての対抗TOBなどがその代表例だ。レコフデータによると日本の運輸・物流業界が関わった2024年のM&Aの件数は前年比62%増の97件、金額では約4倍の9000億円規模に上る。背景には「物流2024年問題」への対応策としてM&Aの有効性が高まったことや、競争優位を構築する上で「規模のメリット」の重要性が大きくなったことが挙げられるだろう。本稿では、上記のトレンドも踏まえながら、日本の物流・運輸業界における経営課題を概観し、その経営課題から導き出される、今後進展が予測されるM&Aの類型、およびM&A実行に向けたチャレンジと対応策について解説していきたい。
1. 日本の運輸・物流業界の経営課題

 日本の運輸・物流業界は直近、日本社会の変化にともない、大きな課題に直面している。業界全体の経営課題について、物流企業と荷主企業それぞれの視点から考察を深めていきたい。

1-1. 物流企業が抱える課題

内需の停滞

 国内産業の空洞化、人口減少により、中長期的に見て内需の停滞は避けられない状況にある。特に首都圏への人口集中・過疎化を踏まえると、この傾向は地方で顕著になる。労働者不足も相まって、物流問題は需要が大きく落ち込む地方部から顕在化していくと考えられる。物流企業には、地方部での配送網の維持コストが大きくかかることになり、サプライチェーンの持続性・効率性の問題が重くのしかかる。また、国内市場だけでは大きな成長の絵が描けないという、ビジネスモデル上の難しさもある。

ドライバーの不足

 人口減少、高齢化等の影響で物流の貴重な担い手であるトラックドライバーの人員数は減少が見込まれる。



■ 筆者履歴

松尾 成晃(まつお・せいこう)

松尾 成晃(まつお・せいこう)
M&A支援を専門とするBCGトランザクション&インテグレーションチームのコアメンバー、および交通・都市開発・運輸グループ、コーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。早稲田大学理工学部卒業。同大学大学院創造理工学研究科修了。EY新日本有限責任監査法人を経て2013年にBCGに入社。不動産、建設、海運、運輸、交通、都市開発などの業界の企業に対して事業開発型M&A戦略、クロスボーダーM&A戦略、組織統合支援、事業ポートフォリオを踏まえた事業売却/新領域投資方針策定など、さまざまな支援を行っている。

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