カナダの同業から買収提案を受けているセブン&アイ・ホールディングスは、株価の低迷に対する有効策が見いだせず、独立を守りにくくなっている。創業家が検討していた
非公開化案も、伊藤忠商事が資金拠出を見送ったため、断念せざるを得なくなった。独自の成長シナリオを描けなければ、多くの株主は買収提案の受け入れを迫ることになる。窮地を打開する妙案はあるのだろうか。
ACTの熟柿主義が奏功
アリマンタシォン・クシュタール(ACT)からの買収提案が表面化した2024年8月以降、セブン&アイは矢継ぎ早に経営改善策や株価浮揚策を打ち出した。コンビニエンスストア事業への集中、経営トップの交代、米国子会社の上場、総額2兆円の自社株買いなどだ。これまでのところ、株価押し上げには失敗している。株価は3月12日現在で2178円50銭と、ACTが提案中の買収価格を500円強下回っている。
■ 筆者履歴

前田 昌孝(まえだ・まさたか)
1957年生まれ。79年東京大学教養学部教養学科卒、日本経済新聞社入社。産業部、神戸支社を経て84年に証券部に配属。97年から証券市場を担当する編集委員。この間、米国ワシントン支局記者(91~94年)、日本経済研究センター主任研究員(2010~13年)なども務めた。日経編集委員時代には日経電子版のコラム「マーケット反射鏡」を毎週執筆したほか、日経ヴェリタスにも定期コラムを掲載。22年1月退職後、合同会社マーケットエッセンシャルを設立し、週刊のニュースレター「今週のマーケットエッセンシャル」や月刊の電子書籍「月刊マーケットエッセンシャル」を発行している。ほかに、『企業会計』(中央経済社)や『月刊資本市場』(資本市場研究会)に定期寄稿。