[M&A戦略と法務]
2016年11月号 265号
(2016/10/18)
~グローバル人事制度・グローバル内部通報制度導入を契機として~
1 はじめに
日本企業が海外の会社を買収し、グローバル展開を図る一方で、海外子会社の経営状況を適切に把握し・管理できないなど、PMIが十分に実行されずに、日本の親会社とのシナジーを生まないケースや、海外子会社の経営管理が、派遣された日本人社長任せになっており、日本の親会社が、ほとんど管理に関与できない状況となっているケースが散見される。さらには、ケースによっては、むしろ海外子会社が、親会社から独立した法人となり、親会社が管理しようとしても海外子会社の情報が取れない事態や、情報が取れたとしても、親会社からの経営指導に従わないなど、海外子会社の管理が難航する実態も見られるところである。
この背景には、日本の親会社とのカルチャーの違いや言葉の壁、地理的要因に基づく情報フローの停滞といった阻害原因があると思われる。もとより日本企業同士のM&Aにおいても、M&A当事会社がシナジーを発揮し、互いの競争力を融合し合うことは一筋縄ではいかないが、これが日本企業と海外企業となれば、両者のギャップが増幅され至難の業となる。
本稿では、買収後の海外子会社のPMIの困難性を打開する方策としての、グローバル人事制度と、グローバル内部通報制度を紹介し、それらの制度の導入の法的プロセスを説明するものである。
2 グローバル人事制度
(1) グローバル人事データベース
M&Aにおいては、いわゆるPMIとして対象会社である海外子会社の人事情報を精確に把握することで、人事交流を図り、より実効的なシナジー効果を期待できる。
例えば、システム開発ベンダが、従前から主要な外注先であったイスラエル所在のソフトウェアハウスを関係強化のために買収し、子会社化したケースを想定する。買収前は、あくまで外注先としてシステム開発の一部を受託するだけの機能を担っていたソフトウェアハウスであったが、買収後は、人事交流により大きなシナジーを発揮することがある。
グローバル人事データベースを構築することにより、英語が話せ、かつ、システム開発のプロジェクト・マネジメントの役割も果たせる人員を条件として、人材発掘(タレントマイニング)をすることが可能となる。このような才能ある人員を日本国内の子会社だけでなく、グローバル規模で人事交流し、適材適所の人員配置が可能となる。
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