レコフデータは1985年以降のM&Aデータベースを構築しています

キーワード 一覧

[【クロスボーダーM&A】「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」を読む(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)]

(2018/08/29)

【第7回】行動6 買収先の「見える化」の徹底(「任せて任さず」)

平野 樹(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 コンサルタント)
  前回は、ディールの成立で安堵せず、買収後のPMIにこそ十分な経営資源を投資することが重要であると触れた。今回のテーマである行動6は、買収先のバリューアップを実現し中長期的に成果を得ていくためのポイントともいえる。

経営実態の早期把握とモニタリング

  M&Aでは、クロージング後の新会社がDay1から滞りなく事業を開始するために、事前に新会社のガバナンス体制や業務プロセスを検討する。デュー・デリジェンスで得られる情報はハイレベルで、実際のオペレーショナルな部分の検討には、より詳細な情報が必要である場合が多い。さらに、クロージングを迎えるとそれまで競争法上の制約といった理由から共有されなかった情報が入手可能となる。この段階であらためて対象会社の経営実態を把握し、買収の前提となった計画を達成し得るものか、思わぬ阻害要因が無いかを精査することが重要であろう。昨年のアンケート調査結果をみると、成功企業ほどクロージング後に得た情報を基にした対象会社の実状把握に努めており、特に「スタンドアロン業績とその変動要因」「営業活動状況」など想定されたシナジーを実現できる基盤の有無、また想定外の価値毀損に繋がる「外部環境の変化」の回答割合が失敗企業と比べて多いことがわかる。

(図表1)買収先を経営する上で必要な経営実態の把握



  ただし相手会社の経営状況は、最初に一度調査すれば良いというものではない。継続的に情報を吸い上げ、透明性を担保し、さらに必要ならば買収側が入り込み、打ち手を検討するというモニタリングと関与の仕組みによってこそ真価を発揮する。

  相手会社のローカル知見を尊重するあまり「買いっぱなし」になってしまい、業績が悪化しても対応が後手に回ったり、買収した子会社に親会社が強く出られないなど立場が逆転するケースは少なくない。自前設立の現地法人であれば阿吽の呼吸で状況を把握できることはあるが、自社とは異なる文化や制度を持つ海外企業と英語でコミュニケーションしていかなければならないところに海外M&Aの難しさがある。

何を任せ、何をグリップするべきか

  「買収側の関与」と一言で言っても、何にどこまで関与すべきなのかは非常に悩ましいところである。放任のみでは上記のように親会社としての機能が危うくなり、かと言って過度に細部まで口出しをすると対象会社の反発を招いたり親会社のリソースを逼迫してしまう。どちらに振れても買収によるバリューアップを十分に実現できないリスクがある。

  判断基準は資本保有率や相手会社の経営状況、買収目的にもよるため一概には言えないが、PMIを重視し成果を上げている企業はこの「任せて任さず」の線引きに妙技があるように思われる。M&Aのパターン毎に統合の深さやマネジメントレベルを整理するとこの辺りの判断が容易となるであろうが、何よりも子会社の状況を「見える化」しタイムリーに把握していることで、異変を見逃さず有事に適切なグリップを効かせることができるのであろう。

価値観・人・ルールによる三方位のガバナンスを効かせる

  買収先の経営を「見える化」する手段として、価値観・人・ルールの3つの軸によるガバナンスを考えてみたい。

(図表2)三方位のガバナンス


  まず価値観によるガバナンスとは、買う側と買われる側というある種対立関係であった両社が、"We"を主語として同じ方向を向くということである。

  当該ディールが双方の社員の知るところとなってからクロージングまでの期間、当然多くの社員はエキサイトするばかりでなく「今後自分や会社はどうなるのか」という不安を感じるであろう。特に被買収者が海外企業がの場合、M&Aに伴うリストラやポジション再編が従来当たり前な環境であるために、買収後に自分の居場所が無くなるのではないかという思いがより顕著になり得る。こうした不安を払拭し、買い手は何を目指しており、目指すゴールに到達するには両社が一枚岩となる必要があるということを伝えることが、PMIのスタートラインでもある。


1 2

バックナンバー

おすすめ記事

【第4回】 企業/事業の競争力とは

スキルアップ

[【DD】M&Aを成功に導くビジネスDDの進め方(PwCアドバイザリー合同会社)]

NEW 【第4回】 企業/事業の競争力とは

松田 克信(PwCアドバイザリー合同会社 ディールズストラテジー&オペレーション パートナー)

NTT、東京センチュリーと資本業務提携

マーケット動向

[マーケットを読む ~今月のM&A状況~]

NEW NTT、東京センチュリーと資本業務提携

M&A専門誌 マール最新号

M&A専門誌マール

M&A専門誌マール

「MARR(マール)」は、日本で唯一のM&A専門誌で、「記事編」と「統計とデータ編」で構成されています。

レコフM&Aデータベース

レコフM&Aデータベース

「レコフM&Aデータベース」は、日本企業のM&Aなどどこよりも網羅的に、即日性をもって構築している日本で最も信頼性の高いデータベースです。

セミナー

セミナー

マールの誌面にご登場いただいた実務家、研究者などM&Aの専門家を講師としてお招きし、成功に導くポイント、M&Aの全体プロセスと意思決定手続き、実証研究から見た分析などについてご講演いただきます。

SPEEDA RECOF

SPEEDA RECOF

「SPEEDA RECOF」とは「レコフM&Aデータベース」と株式会社ユーザベースが開発・運営する企業・業界情報プラットフォームである「SPEEDA」がシステム連携します。

NIKKEI TELECOM日経テレコン 日経バリューサーチ

日経テレコン

2002年7月に、日本経済新聞デジタルメディアが運営する日経テレコンの「レコフM&A情報」を通じてM&Aデータの提供を開始しました。

M&Aに関するお問い合わせ、ご相談は
こちらからお気軽にお問い合わせ下さい。

お問い合わせフォーム