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[【小説】経営統合の葛藤と成功戦略]

2013年7月号 225号

(2013/06/15)

第49回 『現在に責任を負う者と、将来に責任を負う者』

 神山 友佑(デロイト トーマツ コンサルティング)

   山岡ファイナンスサービス社では、半年後に迫る渋沢ファイナンスコーポレーション社との経営統合の準備を進めつつ、水面下で大規模な構造改革が迫られていた。構造改革プランの策定が大詰めを迎え役員会を数日後に控えたある日、統合推進事務局長の松尾明夫は社長から呼ばれ、思いがけない打診を受けることとなった。

急な呼び出し

   山岡FS社の経営企画室長であり、渋沢FC社との統合推進事務局長も兼務する松尾明夫は、社長の野澤博人の指示通りに構造改革プランの役員会上程準備を進めていた。ようやく盛り上がりつつある統合機運に大きく水を差すことは間違いなく、今後半年間にわたり負荷が増え続ける統合最終局面を「果たして無事に乗り越えられるのか」と、松尾は不安を感じずにはいられなかった。
   そんなある日、夕方遅くに秘書室長から松尾は連絡を受けた。今すぐ社長室に来てくれとのことである。構造改革プランの社長承認を受けてからまだ2日しかたっていない。親会社との調整などで、何か急な方針変更が発生したのではないかと松尾は嫌な予感を抱きながら、急ぎ足で役員フロアに向かった。

親会社からの出向者

   「おお、急に呼び立ててしまいすまない。どうしても松尾君に早く紹介したくてね」
   社長室に入ると、野澤はいつものにこやかな笑顔で松尾を迎え入れた。そして同時に応接ソファから一人の男が立ち上がると、松尾に深々と頭を下げた。テーブルを挟んだ向かい側には、取締役人事部長の矢敷寛矩の姿も見える。
   松尾は状況を掴みかねる中で、野澤に進められるままに応接ソファの端に腰を下ろした。そして先ほど頭を下げた男に視線を向けると、その顔には明らかに見覚えがあった。数年前に野澤社長と親会社の会議に参加した際、議事進行を司っていた人物である。年齢は松尾よりも一回り近く若いだろう。物腰は穏やかであるが、じっくりと考え発せられる言葉には重みがあり、年齢以上の貫録を漂わせていた。親会社内でもエース級の人材であることは間違いなかった。
   「彼は昔の私の部下で、緑川祐哉君だ。松尾君も何度か顔を合わせたことがあると思う」
   野澤からの紹介に、松尾は状況が呑み込めないまま無言で頷くと、今度は矢敷が口を開いた。
   「緑川さんには、来週から山岡FS社に出向してもらうこととなりました。松尾さんとは違う部門ではありますが、経営企画室長であるあなたとは深く連携頂く必要があります。また松尾さんが手がけられてきた仕事の一部を、緑川さんに引き継いで頂きたい」
   予想外の話に、松尾は驚き声が出なかった。しばらく間が空いたのち、野澤が説明を始めた。

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