本記事は、M&A専門誌マール 2020年12月号 通巻314号(2020/11/16発売予定)の記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。
ベインキャピタル・プライベート・エクイティ・ジャパン(以下ベインキャピタル)が、医療関連、介護サービスなどを展開するニチイ学館と組んで、8月17日まで実施していた
TOBに株主から議決権ベースで82%超の応募があり、
MBOが成立した。このTOBに関しては、いわゆる
アクティビストファンドからの公開買付価格引き上げ提案のほか、経済産業省が定めた「
公正なM&Aの在り方に関する指針」に抵触しているとの批判も出るなど、注目の案件となった。
ベインキャピタルの本件主担当者である末包昌司マネージングディレクターに、ニチイ学館MBOの詳細な経緯と今後の成長戦略について聞いた。
<インタビュー>
懸案だった構造改革を進め、国内基盤強化のためのM&Aも
末包 昌司(ベインキャピタル・プライベート・エクイティ・ジャパン・LLC マネージングディレクター)
MBOに至った経緯
―― 2019年9月に創業者で会長の寺田明彦氏が死去し、2020年5月8日にニチイ学館がベインキャピタルと組んでMBOを行うという発表を行いました。MBOに至った経緯についてお聞かせください。
「ニチイ学館は、亡くなられた寺田明彦元会長が1968年に創業した会社で、今日の業容を築き上げるにあたっては創業者である寺田氏の強力なリーダーシップがありました。医療関連事業を始められて、その後介護事業などにも参入されるなど、急速に成長されてきたわけですが、その寺田元会長が亡くなられるという事態に直面して、経営陣の方々としては、早く集団経営体制を確立することが必要だと考えておられたと思います。
それに加えて、急速に拡大してきた事業構造を迅速に改革していく必要性も感じておられました。業績面では短期的に赤字になる可能性もあるかもしれませんが、そのようなリスクを取ってでも改革を行う必要があると思われていたのだと聞いています。同時に、それを実現するためには経営体制の強化が不可欠だと考えられたということが、MBOに踏み切られた一番のきっかけだったと思います。
そのために、外部のパートナーと組んで非公開化することを1つの選択肢として検討されたと伺っております。ニチイ学館においてどういった経緯で私どもを選んでいただいたかというのは、想像するしかありませんが、私どもが伺っている範囲では、まずベインキャピタルがグローバルでヘルスケア関係の投資実績が豊富であるというところがございます。2つ目に、日本において数多くの日本企業の経営改革をリードして結果を出してきているという評価をいただいているという点があります。そして、他の
PEファンドもハンズオンとおっしゃるかもしれませんが、私どものスタッフは特に、事業会社、コンサルティング会社出身のプロフェッショナルが非常に多く、これまでの投資先についても、コストの削減だけでなく、しっかりトップラインも伸ばし、さらにロールアップのためのM&Aなども行ってきています。こうした実績を積み重ねてきておりますので、事業改革の推進役としては適切であろうということで、私どもを選んでいただいたと伺っております。
それに加え、人的関係の影響も、もちろんあると思います。すなわち杉本(勇次、ベインキャピタル日本代表)が2015年から社外取締役を務めていて、今の経営陣の方々と信頼関係の構築を進めてきたという点も、プラスに働いたと思っております」
ベインキャピタルの杉本日本代表が社外取締役になった経緯
―― ベインキャピタルの日本代表である杉本氏は、2015年にニチイ学館の社外取締役に就任し、経営陣にアドバイスするという立場におられたわけですが、社外取締役就任は明彦元会長との人的な関係ですか。...
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石綿 学(森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士)