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[マールインタビュー]

2014年8月号 238号

(2014/07/15)

No.168 法律学と会計学の交錯領域の問題を解明し、会社法やM&Aでも提言する

 弥永 真生(筑波大学 ビジネス科学研究科 教授)

弥永 真生(筑波大学 ビジネス科学研究科 教授)

日本版IFRSの意義

-- IFRS(国際会計基準)の日本版(J-IFRS)の作成が進行中です。どういうものですか。

「日本でも既にIFRSの任意適用が認められていますが、適用する企業が思ったほど増えていません。そこで、金融庁の企業会計審議会で、IFRSの一部の基準を削除や修正(カーブアウト)した日本版IFRS(J-IFRS)をつくることが提案されたのです。私もこの審議会には企画調整部会臨時委員として関与しています。こうしたやり方でIFRSを自国基準に取り込む方法はエンドースメント手続きと言われています。これにより、IFRSが国内で顕著に適用されている状態にして、IFRSの作成に当たる国際会計基準審議会(IASB)やIFRS財団で、日本の発言力を確保したいという狙いもあります。この方針に基づき、現在、企業会計基準委員会で具体的な検討作業が進められています。2015年4月1日以降に開始する会計年度から日本版IFRSが任意適用されることを目指していると理解しています」

-- 日本版は純粋な(ピュア)IFRSのハードルを下げるのですか。

「日本版の適用を増やそうとすれば、日本企業が使いやすいものにしないといけないし、逆に、そちらを優先すると、日本版と銘打ってもIFRSとは似て非なるものになってしまいます。私が一番心配している点は、IFRSの特徴が保てるかです。IFRSは、いくつもの会計基準からできあがっていますが、一組の会計基準として内的整合性をもち、全体がいわゆる原則主義のトーンで貫かれています。これに対し、日本基準は細則主義をとっています。原則主義か細則主義か、一見して判明する一番の違いは数値基準を入れているかどうかです。例えば、ある会社が子会社に当たるかどうかの判断で、日本は支配力基準をとりつつも、議決権比率50%超ならそれだけで、40%以上50%以下の場合には一定の要件をみたすべきなどというように、数値を示しています。また、有価証券の時価が著しく下落した場合に減損処理をするかどうかの判断では、下落率が30%以上としています。これに対し、IFRSはこうした具体的数値は入れていません。ですから、日本版だからといって、ある部分だけに数値基準が入ると、一組の会計基準としての内的整合性がとれなくなってしまいます」

-- 企業結合で発生するのれんの償却や、有価証券評価差額などを当期純利益として計上し直すリサイクリング(組替調整)の問題はどうですか。

「この点はこれまでも、日本として受け入れがたい項目として世界に発信しています。日本のやり方は、IFRSの会計処理とは異なるものですが、発想の違いとして説明ができます。日本版IFRSがそうなったからといって、IFRSの根本哲学、特徴、概念フレームワークに反するものではないと考えています」

-- 日本版IFRSができたら適用する企業は増えそうですか。

「私は日本版IFRSをつくっても、残念ながら、利用する企業は少ないのではないかと思っています。では何のためにつくるのか。日本の考え方、ここだけは譲れないという考え方を海外に発信するという意義がありますが、それもさることながら、日本が将来、IFRSを強制適用することがあるとすれば、そのときのための準備作業の意味があると思っています。と同時に日本は、今のままではIFRSを丸呑みできない、最低でものれんやリサイクリングのところはカーブアウトするというメッセージをIASBに送ったことになります。IASBは、日本の早期の強制適用を期待していて、『日本はなんのかんの言っていても、最終的にはIFRSに全面的に従うだろう』と思っているようです。日本が今回、強い姿勢を見せたことで、うまくいけば、今後、IASBに対しより強い交渉力を持つこともありえるのではないでしょうか」
 

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