売上高「全店ベースでマイナス」の衝撃
予想された結果とはいえ、厳しい状況をうかがわせる内容だった。コンビニエンスストア(以下、コンビニ)の2020年の売上高である。
日本フランチャイズチェーン協会が発表したコンビニ大手7社の2020年の売上高は、既存店ベースで1.8%の減少、全店ベースで4.5%の減少となった。年間で全店売上高が前年実績を下回ったのは統計を開始した05年以来初めてである(図表1)。
大手3社の売上高をみても、底堅さを見せているセブンイレブンでも前年割れは避けられない状況にある(図表2)。
図表1 コンビニ大手7社の売上高伸び率(前年比)
図表2 コンビニ各社の売上高伸び率(既存店:前年同月比)
コンビニ業界にとって「全店ベース」でマイナスとなった衝撃は大きい。それは「コンビニ市場の頭打ち」を示唆するものでもあるからだ。
2020年の売上急減は明らかにコロナ禍の影響によるものだ。感染拡大で外出自粛が続き、オフィス街や観光地での需要減が響いた。テレワークで自宅での食事機会が増えたことで、普段は会社帰りにコンビニに寄っていた人も近所のスーパーに足を運ぶ。家で巣ごもり食事をするなら、生鮮品を中心に品揃えが豊富なスーパーが圧倒的に優位となるからだ。
では新型コロナウイルスの感染が収束すれば元のようにコンビニに客足が戻るのか。筆者はそう簡単な話ではないと考えている。なぜならコンビニの売上減の本質はコロナ禍ではないからだ。根底にあるのはコンビニが抱える構造問題であり、2020年は図らずもコロナ禍がそれを浮かび上がらせた。その象徴が「全店ベースのマイナス」なのである。
明らかとなった「成長の壁」
これまで幾度となくささやかれてきた「コンビニ限界説」。超えられないと言われてきた5万店を乗り越えてきたが、2019年末に店舗数が頭打ちとなり、いよいよ成長の壁が見えてきたと言っていい(図表3)。
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■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社、一般社団法人日本リサーチ総合研究所を経て、2020年4月より合同会社センスクリエイト総合研究所代表。株式会社東京商工リサーチ客員研究員を兼任。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。
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藤原裕之のブログ アートとサイエンスの「あいだ」」を運営。