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議論進む「ジョブ型雇用」
欧米諸国で普及している職務を限定した雇用制度「ジョブ型雇用」がここにきて再注目されている。大和証券はトレーダーなど高度専門職を対象に21年度からジョブ型雇用を導入する。転職市場での価値に応じた報酬を払う仕組みを導入するそうだ。
リクルートキャリアが昨年9月に実施した人事担当向けアンケート調査によると、「ジョブ型雇用」を導入している企業は全体で1割程度にとどまる。しかしその一方、コロナ禍でジョブ型雇用の議論が進んだと回答した割合は全体で24.8%、従業員数5,000人以上の大企業では36.4%と大企業を中心にかなり議論が進んでいる(図表1)。
図表1 ジョブ型雇用の検討状況(コロナ禍を受けて議論が進んだか)
コロナ禍の環境変化が議論を後押し
コロナ禍でジョブ型雇用が再注目されるようになった理由としてよく挙げられるのが、「テレワークで部下・同僚の様子がわからないから」というものだ。今まではオフィスという物理空間で上司が部下の仕事ぶりをそばで監視してきたがテレワークでは困難になる。部下がサボらないように職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)で担当職務が言語化されていれば外からも進捗管理がしやすいということだろう。発想が安易といえなくもないが、ジョブ型雇用は報酬と監視の仕組みを維持する上でうってつけの仕組みに映るのは理解できる。
企業側の事情に加え「働く側」の意識変化も大きい。テレワークをきっかけに多様な働き方を検討する人が増えている。今までのように一つの会社に依存するのではなく副業や地域活動などにも参加したい。地方に移住して仕事はテレワーク中心にしたい。そうなると会社での仕事や役割が明確でないと他の活動が並行してできなくなる。特に今の若い人はSNSなどの仮想空間上で様々な顔を使い分けながら他者とのやりとりを楽しんでいる。勤め先だけどういう顔をしていいかわからないというのではやる気も湧いてこないだろう。
ジョブ型雇用の問題点
このようにコロナ禍をきっかけにジョブ型雇用に再び注目が集まっている。しかしジョブ型雇用が企業も働き手もハッピーにしてくれるとは限らない。ジョブ型雇用にはいくつかの問題が指摘されている。
① チーム仕事に向かない
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■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社、一般社団法人日本リサーチ総合研究所を経て、2020年4月より合同会社センスクリエイト総合研究所代表。株式会社東京商工リサーチ客員研究員を兼任。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。
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藤原裕之のブログ アートとサイエンスの「あいだ」」を運営。