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サステナブルと企業価値が結びつかない理由
~ やらされ感満載のサステナブル対応
企業経営のテーマとして「サステナブル」が話題にならない日はない。さらにここにきてサステナブルを求める声はますます高まっている。米アップルは3月31日、同社に納める製品の生産に使う電力をすべて再生可能エネルギーでまかなうと表明したサプライヤーが110社を超えたと発表した。
そして今、サステナブル経営が最も求められているのがアパレル業界だ。本連載でもかつてアパレル企業とサステナブルについて取り扱ったが、最近のアパレル企業は「サステナブル一色」といっていい。リサイクルの素材を使って作りすぎを無くし、ゴミとなってでてきたものは再利用するという、食物連鎖の絵のようなものを紹介している企業もある。
一見するとサステナブルに必死に対応しているようにみえる。しかしどこか違和感を覚えるのは筆者だけでないだろう。違和感の正体は「やらされ感」だ。必死にサステナブル対応をアピールする姿は不祥事対応に追われる企業の姿と酷似する。内発的に行っているのではなく、世の中がサステナブルを求めているからやっている感がにじみ出ているのだ。
やらされ感満載でサステナブルをアピールしても、消費者はそのブランドの洋服をワクワクして購入したくなるとは思えない。筆者の周りをみても「この洋服、サステナブルだから購入した」という人はあまりみたことがない。
~ サステナブルで商品は売れない
当のアパレル企業自身も「サステナブルだから売れる」とは思っていないのではないだろうか。「世間がサステナブルを求めているから」「今はサステナブルがトレンドだから」と言い聞かせながら対応している節がある。やらされ感を持ちつつ対応しているので本腰が入らないのも無理はない。アパレル企業はその違和感に真正面から向き合わない限り真の意味でサステナブル経営をモノにすることは不可能である。
実際のところサステナブルに対するアパレル企業の違和感は正しい。すなわち「サステナブルだから売れる」わけではないのだ。サステナブルと売り上げ(企業価値)のジレンマを解決しない限り、アパレル業界が真にサステナブル経営を取り入れることは不可能なのである。
「気付いたらサステナブルになっていた」を目指す
ではサステナブルと売り上げの両立はどのようにすれば実現できるのか。それはあえて「サステナブルを目標としない」ことだ。目指すべきはあくまで「顧客を魅了する商品を提供する」ことにある。社員が熱狂しながら作り出した商品は自信をもって顧客に届けたくなるはずであり、結果として
「気付いたらサステナブルになっていた」
となるのが理想である。
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■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社、一般社団法人日本リサーチ総合研究所を経て、2020年4月より合同会社センスクリエイト総合研究所代表。株式会社東京商工リサーチ客員研究員を兼任。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。
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藤原裕之のブログ アートとサイエンスの「あいだ」」を運営。