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コロナ禍の巣ごもり消費が長期化する中、「魚食」が見直されている。食品スーパーの売り場では、さばカレーなどバリュエーションに富む魚介缶詰が並ぶようになった。イオンは2021年5月にキューブ型にカットした冷凍魚素材を発表し話題を呼んだ。
日本では「魚離れ」が指摘されて久しい。水産加工業界は仕入れで海外勢に買い負けるなど悔しい思いをしてきた。そうした中で魚離れの解消は水産加工業界にとってこれ以上ない追い風になる。魚離れは本当に食い止められるのだろうか。
長引く魚離れに回復の兆し
~ 魚離れは「肉シフト」
日本の魚離れは10年以上続く構造的な現象である。家計の食費に占める魚介類と肉類の支出割合をみてみると、魚介類の支出割合は10年以上低下し続けているのに対し、肉類の支出割合は上昇トレンドにある。肉類と魚介類の支出割合は2013年に逆転し、日本人の食卓の中心が魚から肉にシフトしたことがよくわかる(図表1)。
よく知られるように魚食と肉食の逆転現象の理由は「食の欧米化」だ。高度成長期に洋食が普及する中で肉を食べる機会が増え、幼少期から肉を食べて育った世代が料理をするようになって魚離れが一気に進んだ。魚は「調理しづらい」「食べづらい」「価格が高い」食材であるため、いったん魚離れが進むと構造現象として定着化しやすい。
図表1 家計の魚介類と肉類の支出割合(対食費)
~ コロナ禍で変化の兆し
魚離れが構造現象である限り、何らかの大きなきっかけがなければ元に戻る可能性は低い。しかしその「何らかの大きなきっかけ」がコロナ禍で起きる可能性が出てきた。
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■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社、一般社団法人日本リサーチ総合研究所を経て、2020年4月より合同会社センスクリエイト総合研究所代表。株式会社東京商工リサーチ客員研究員を兼任。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。
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藤原裕之のブログ アートとサイエンスの「あいだ」」を運営。