セブン&アイ・ホールディングスが、傘下の百貨店「そごう・西武」を売却する検討に入ったことが明らかとなった。不振が続いている百貨店事業を切り離し、コンビニエンスストア事業に経営資源を集中することが狙いとされる。旧そごうグループは2000年に経営破綻、旧西武百貨店は03年に私的整理となり、両社は経営統合を経て06年にセブン&アイの傘下に入った。そこから15年経っても再建の道筋が見えてこないということなのだろう。 買収意向を持つ投資ファンドの思惑や不動産の売却価格等に関心が集まっているようだが、本記事では以下の点を中心に考察したい。・ そごう・西武の長期低迷の原因・ セブン&アイとのシナジー効果が生まれなかった原因・ そごう・西武の再建には何が必要か回復の見込みが立たない業績 そごう・西武の不振は業績に如実に表れている。店舗数は完全子会社となった07年2月期の28店舗から足元で10店舗まで減少している。これに伴い、07年2月期に9534億円だった売上は21年には4300億円まで半減した。近年はインバウンド効果等で19年2月期に3億円の最終利益を計上した以外は21年2月期まで最終赤字が続いている。コロナ禍の影響は続いており、これから迎える22年2月期も3四半期までの累計期間(21年3月1日~21年11月30日)ですでに102億円の赤字となっている。 15年以上経過しても再建の見込みが立たない中でコロナ禍が追い打ちをかける。こうなるとセブン&アイにとってそごう・西武はお荷物的存在となり、売却を検討する話がでてもおかしくはない。図表1 そごう・西武の業績推移長期低迷をもたらした2つの構造問題...■ 藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)略歴:弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社、一般社団法人日本リサーチ総合研究所を経て、2020年4月より合同会社センスクリエイト総合研究所代表。株式会社東京商工リサーチ客員研究員を兼任。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。ブログサイト「藤原裕之のブログ アートとサイエンスの「あいだ」」を運営。※詳しい経歴・実績はこちら※お問い合わせ先:hiroyuki.fujiwara@sense-create.co.jp