第1 はじめに 2024年5月15日、公開買付制度の改正を含む金融商品取引法(以下「法」といい、金融商品取引法施行令を「令」といい、発行者以外の者による株券等の
公開買付けの開示に関する内閣府令を「他社株府令」といい、株券等の大量保有の状況の開示に関する内閣府令を「大量保有府令」という)等の改正が成立し、当該改正に係る政令・内閣府令もパブリック・コメントを経て2025年7月4日にその内容が公表された。今回の改正は、公開買付制度の中心ともいえる3分の1ルールに変更が加えられる等、実務上の影響も大きく、かつ、その内容も多岐にわたる。施行日である2026年5月1日から「新しい公開買付制度」が適用されることになるが、本稿ではその概要及び留意点について取り扱う。なお、本稿において意見にわたる部分については筆者らの個人的な見解である。
第2 新しい公開買付制度の概要 1 3分の1ルールの変更 新しい公開買付制度では、(1)従前の3分の1ルールが見直され(閾値の引下げ、市場内取引(立会内)等への適用)、それに伴い、(2)「急速買付け等」規制等の廃止、(3)適用除外買付け等の見直し(僅少な買付けの創設等)、(4)形式的特別関係者の範囲の見直し(親族関係の排除等)がなされている。
■筆者プロフィール■
中西 健太郎(なかにし・けんたろう)
TMI総合法律事務所パートナー弁護士。2000年弁護士登録。2004年から2006年に、金融庁総務企画局市場課へ出向し、金融商品取引法の立案に携わる。主として、M&A及び各種金融法務に従事。
中村 浩(なかむら・ひろし)
TMI総合法律事務所弁護士。2015年弁護士登録。公開買付けを中心とする上場会社のM&A等を取り扱う。2021年Duke University School of Law卒業(LL.M. Business Law Certificate)。2022年から2024年に、金融庁企画市場局企業開示課へ出向し、公開買付規制、大量保有報告規制に携わる。2022年カリフォルニア州弁護士登録。2024年米国公認会計士登録(ワシントン州)。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。