コロワイドによるTOB成立
9月9日、外食大手コロワイドは大戸屋ホールディングス(HD)への敵対的
TOB(株式公開買付け)が成立したと発表した。コロワイドの持ち株比率(議決権ベース)は19.16%から46.77%に上昇、「実質的な支配」が成立する条件40%を上回ったことで大戸屋HDの子会社化が確定した。大戸屋の現経営陣はコロワイドのTOBに真っ向から反対したが、株主を引き留められなかった格好だ。
TOB成立を受けてコロワイド側は、窪田社長含む大戸屋の現取締役11人中10人の解任と、コロワイド側の7人を新たな取締役候補として選任するよう求めると発表した。お家騒動問題などもあり、大戸屋とコロワイドの話はどうしても人事関係の話題が中心になりがちだが、問題の核心はあくまで「大戸屋をどう再建するか」にある。
大戸屋の足元の業績は厳しい。月次の売り上げデータを見ると、緊急事態宣言解除後の6月以降もファミレスなど他業態と比較して売り上げの戻りは鈍い(図表1)。
図表1 大戸屋とファミレスの売上高(前年同月比)
なぜ値上げが受け入れられないか
~ 2度の値上げ
大戸屋の業績低迷はコロナ禍の前から起きている。きっかけは2度にわたる「値上げ」にある。
大戸屋は人件費や食材の高騰等を理由に、2018年7月と2019年4月に値上げを行っている。19年4月のメニュー改定では安価で人気だった「大戸屋ランチ」720円(税込み、以下同じ)を廃止し、定食メニュー12品目を値上げした。「しまほっけの炭火焼き定食」(970円→1040円)のように1000円超えメニューも登場する。
2度にわたる値上げが客離れの引き金を引いたのは間違いなさそうだが、重要な点は「顧客がなぜ高いと感じたか」にある。リッツ・カールトンでは100円のコーラを1000円で提供しても苦情はこない。価格に対する顧客の反応にはシチュエーションが大きく関係している。コンビニで購入するコーラは「日常」だが、リッツ・カールトンで飲むコーラは「非日常」だ。...
■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社、一般社団法人日本リサーチ総合研究所を経て、2020年4月より合同会社センスクリエイト総合研究所代表。株式会社東京商工リサーチ客員研究員を兼任。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。