[寄稿]
2015年6月号 248号
(2015/05/20)
近年、米国では、投資ファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)による売却案件において、表明保証保険が広く利用されるようになっている。そのため、米国での取引、特にプライベート・エクイティ・ファンドが実施する入札の参加者にとって、表明保証保険の理解は、入札において競り合っていく上で必須といえる。さらに、入札案件以外の類型のM&A取引において表明保証保険の利用が増加することも見込まれる。しかしながら、そのことは、表明保証保険があらゆる取引で利用できることを意味するものではないし、また利用すべきというものでもない。表明保証保険契約は、個々の取引に合わせてかなりカスタマイズされる保険商品であり、表明保証保険の利用が適切であるか否かは、事案ごとに判断する必要がある。そのような判断に資するべく、本稿では、表明保証保険の特徴について概説し、もってクロス・ボーダー取引を検討している日本企業において、買収契約に規定される補償条項との相違点を含む表明保証保険の基本的事項を理解したうえで、海外のM&A取引慣行の変化への対応に備えていただくことを趣旨とするものである。
表明保証保険の普及の背景
表明保証保険は一昔前から存在していた保険商品であるが、その利用が普及したのは近年である。表明保証保険は、買収契約において売主及び買収対象会社(又はそのいずれか)が行う表明保証に関して、不正確、虚偽又は違反であって、意図的なものでなく、かつそのことが知られていないもの(以下「表明保証違反」という。)があったとき、これにより生じる経済的損失から被保険者を保護するものである。表明保証保険は、売主の保護と買主の保護のいずれを対象とする商品としても利用できる(売主を保護する保険を「売主側表明保証保険」と、買主を保護する保険を「買主側表明保証保険」という。)。これらのうち、特に買主側表明保証保険は米国M&A取引において重要な事項であるため、本稿では買主側表明保証保険を主に検討する。以下、表明保証保険の発展の経緯の参考とする意味で、はじめに米国M&Aマーケットの変遷について簡単に言及する。
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