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[M&A戦略と法務]

2017年9月号 275号

(2017/08/15)

表明保証保険とその活用に際しての実務上の留意点

 十市 崇(TMI総合法律事務所 弁護士)

一 はじめに

  M&Aに際して締結される、いわゆるM&A契約には、表明保証条項が規定されることが一般的であるが、表明保証条項に関連して、近時、表明保証保険が活用される場面が増加している。とりわけ、従前はいわゆるIn-Out型のクロスボーダーM&A取引における活用が中心であったが、最近ではいわゆるIn-In型の国内M&A取引においても、その活用が検討される事例が増加している。本稿においては、今後その活用がさらに増加することが予想される表明保証保険の概要とともに、その活用に際しての実務上の留意点について解説することとしたい。

二 表明保証保険の概要と活用場面

  一般に、表明保証保険は「M&A契約に規定された表明保証の違反があった場合に、契約当事者が被ることになる経済的損失を保護することを目的とする保険」と定義することができるように思われる。表明保証保険には売主用の保険と買主用の保険の双方が存在すると言われているが、M&Aの実務上、活用されることが多いのは買主用の保険であることから、以下本稿においても買主用の保険の活用を前提とした解説を行う。買主用の表明保証保険にも、売主に対する請求を前提とする表明保証保険(いわゆるリコース型の表明保証保険)と売主に対する請求を原則として前提としない表明保証保険(いわゆるノンリコース型の表明保証保険)がある。

  買主用の表明保証保険が活用される主な目的としては、売主の信用を補完して、補償の実効性を確保するという点が最も大きな点であろう。また、いわゆるオークション案件などにおいては、表明保証保険を活用することによって、競合する他の買主候補との比較において、売主に対して有利な条件提示が可能となるとのメリットもある。さらに、とりわけノンリコース型の表明保証保険では、売主との摩擦を回避することが可能になるとともに、リコース型の表明保証保険では、売主に対する補償請求の範囲を拡大できることなどもその効用として挙げることができる。

  実務上、表明保証保険が活用される主な場面としては、(1)売主が投資ファンドで、いわゆるクリーン・エグジットを志向する場合、(2)売主が創業株主や経営陣などの個人で信用力が十分ではない場合、また(3)いわゆるオークション案件などで複数の買主候補が存在しており、買主が自らの補償請求権を確保しつつも、売主にとってより魅力的な提案を行うための手段として活用される場合などがあるが、上記の複数に該当するような場合、買主用の表明保証保険が活用されるとともに、最終的に活用にまでは至らなくとも、少なくとも、その活用が検討される事例も増加している。とりわけ(3)に関連して、買主が十分に競争優位な価格を提示できていない場合、また競争法上のクリアランスの取得に懸念がある場合など、自らが他の潜在的な買主候補と比較して、より有利な条件を提示する必要がある場合には、表明保証保険の活用の検討がより有益となる。また、ファンドが売主となるオークション案件などでは、売主が買主による表明保証保険の活用を入札の条件にするとともに、あらかじめ表明保証保険のアレンジを行うことがあり、このような場面では、買主が表明保証保険の活用を事実上、強制されることもある。この場合であっても、売主がアレンジした表明保証保険を必ず活用しなければならないわけではなく、自らが選定する保険会社を通じてアレンジする表明保証保険を活用することもできる場合が実務上、多いように思われるが、オークション案件では他の買主候補者の動向にも十分留意をすることが重要となろう。

  なお、表明保証保険の活用を検討する場合であっても、一定規模以上のM&A案件は、そのリスクの高さから表明保証保険の対象とならず、また一定規模以下のM&A案件は、プロセスに要すコストから表明保証保険の活用が適しない場合もある。また四において検討をする通り、表明保証保険には種々の例外等も存在することから、その限界について十分に理解をするとともに、加入に際して支払う保険料に十分に見合う内容となっているか否かについて、慎重な検討を行うことが重要であろう。

三 M&Aのプロセスに際しての留意点

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