左から石鍋健室長、木俣貴光部長
三菱UFJ銀行財務開発室のM&A体制は約90人で、国内・海外拠点を有する。市場活況による案件増に対し、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)と協働して
FAサービスを拡充している。案件ごとに両社で一体チームを組み、役割分担して対応する。顧客層は事業承継が約半数を占めるが、大企業の
カーブアウト、
TOBや
クロスボーダーと多岐にわたる。厚い国内顧客基盤とセルサイド案件の
ソーシング力を持つ点が強みだ。
同行のM&Aサービスの特徴として、高いマッチング力、利益相反を排すため売り手か買い手いずれか一方のFAに徹する点、買収ファイナンス等の金融サービスとの連携などが挙げられる。他行比ではTOBやクロスボーダー案件に強みを持っている。取り組みの内容を聞いた。
収益額は2021年度から2024年度にかけて2倍に増加 ―― M&Aの執行体制はどのようになっていますか。
石鍋 「銀行のM&A体制は、総勢約90人です。国内では東京、名古屋、大阪の拠点に加え、大企業・上場企業専任の営業本部、海外案件を扱うクロスボーダーチーム、そして企画管理部門があります。海外ではニューヨーク、シンガポール、ロンドン、香港の4拠点に人員を配置し、東京のクロスボーダーチームと連携して海外案件にも対応しています。
MURCとは、主に国内案件において協働し、FAサービスなどを提供しています。近年、M&A市場は活況を呈しており、事業承継、上場企業の
非公開化、クロスボーダーといった案件が増加しています。こうした状況下で、銀行単独ではお客さまの全てのニーズに応えるのが難しくなってきているため、MURCと協働することで、より多くのM&Aアドバイザリーサービスを提供できる体制を構築しています」
■石鍋 健(いしなべ・たけし)
三菱UFJ銀行 コーポレート情報営業部 財務開発室長
1997年3月慶應義塾大学経済学部卒業。三菱UFJ銀行入行以来、銀行および証券において通算25年間M&Aアドバイザリー業務に従事。上場企業の経営統合やTOBから、大企業のカーブアウトや事業承継型のM&Aまで、幅広く多数の案件をサポート。2018年5月に銀行の財務開発室次長、2023年4月より財務開発室長となり、銀行におけるM&Aアドバイザリーの責任者として業務全体を統括。
■木俣 貴光(きまた・たかみつ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング コーポレートアドバイザリー部長 マネージング・ディレクター
早稲田大学政治経済学部卒業後、大手石油会社、外資系コンサルティング会社を経て現職。専門は、M&A、事業承継、グループ組織再編等。名古屋市立大学大学院修了(経済学修士)。中小企業庁「中小PMIガイドライン策定小委員会」委員、「中小M&Aガイドライン改訂小委員会」委員、「中小M&A市場の改革に向けた検討会」委員等を歴任。主な著書に実務小説『企業買収』(中央経済社、2012年)、『M&A戦略の立案プロセス』(中央経済社、2019年)、『企業買収の実務プロセス第3版』(中央経済社、2021年)、『PMIの実務プロセス』(中央経済社、2023年)などM&A関連の著書多数。