オーケー都心進出のなぜ
食品値上げで家計の負担感が増すなか、低価格をウリとする食品小売チェーンが勢いを増している。その先頭に立つのがディスカウントスーパー「オーケー」(横浜市)である。同社は東京や神奈川など首都圏に約140店を展開する。新規出店は過去3年で年6店舗程度だったが、2022年度以降は出店ペースを加速している(図表1)。
オーケーの出店ニュースで特に注目を集めたのが5月17日に発表された23年秋の東京・銀座出店だ。商業施設「マロニエゲート銀座2」に「オーケー銀座店」を出店する。すでに22年10月に港区・芝に「札の辻店」をオープンしているように、銀座への出店は同社の成長戦略に「都心進出」が明確に組み込まれていることを意味する。これに対し、「成城石井のような高品質スーパーならわかるが、なぜ銀座でディスカウントスーパーなのか?」「需要はあるのか?」といった違和感を持つ人も少なくない。
筆者はオーケーの都心進出は決して奇をてらったものではなく、タイミング的にも最適な戦略ではないかと考えている。なぜ妥当と考えられるのか、データをみながら確認していこう。
図表1 オーケー店舗数の推移
都心進出をサポートする3つの材料 オーケーの都心進出は以下3つの材料によって支持される。
① 東京都心への人口流入が再加速 第1は、東京への人口流入が再加速している点にある。コロナ禍では在宅勤務の普及などから東京から少し離れた地域へ転出する傾向がみられたが、22年以降その流れが変わりつつある。22年の住民基本台帳人口移動報告では、東京都は転入者が転出者を上回る「転入超過」が3万8023人となり、転入超過幅は3年ぶりに拡大した。直近23年4月も東京都への転入者は転出者を8825人上回り、転入超過は4カ月連続となっている(図表2)。...