居酒屋業界はようやく回復し始めたが コロナ禍で未曽有の打撃を受けた居酒屋業界にようやく回復の兆しがみえてきた。今年5月の新型コロナウイルスの5類移行で会社員の大人数の飲み会などが戻ってきたこともあり、売上は急回復している。一時はコロナ禍前(2019年)の約1割まで落ちこんだ売上高も、5月時点で19年の7割近くまで回復してきた(図表1)。
図表1 居酒屋・パブの「売上高」増減率(2019年同月比)
このペースで行けばコロナ禍前の水準を達成するのは間違いない。そう言いたいところだが、筆者には居酒屋業界がこのまま順調に回復し続けるようには思えない。それは店舗数の減少に表れている。直近6月の居酒屋・パブの店舗数は19年同月比68.6%減と、減少し続けている(図表2)。ビジネス街や繁華街を中心に閉店が相次いでいるためである。
業界の売上が戻るには、店舗数が再び増加に転じることが条件になる。居酒屋店の多くはコロナ禍ですでに体力を消耗しており、そこへ原材料費高騰、人手不足、新型コロナ関連融資の返済開始、家飲み習慣の定着など様々な問題が追い打ちをかけている。本稿ではあまり取り上げられることのない「家飲み習慣の定着化」という問題に焦点を当て、居酒屋業界の先行きを見通したい。
図表2 居酒屋・パブの「店舗数」増減率(19年同月比)...