- <目次>
- 3Dによる富士ソフトへの株主提案は否決
- 焼津水産化学工業はTOB価格引き上げで再チャレンジに成功
- ダルトンの江崎グリコに対する東証要請に関する株主提案が4割の賛成率
- エリオットの三井不動産への投資で不動産株全体が上昇
- アクティビストは不動産や政策保有株式が多い繊維企業に注目
- ひびき・パースがエンゲージメントを行ったきんでん
- MBO、「同意なきM&A」、業界再編へアクティビストの関与が増加
- しまむらはカタリスト投資顧問の株主提案への反対決議と中計を発表
- 2023年度の政策保有株の時価急騰が反映されるのは2024年の株主総会
3Dによる富士ソフトへの株主提案は否決 シンガポールの3Dインベストメント・パートナーズ(3D)による富士ソフトへの株主提案が注目を集めた。3Dと米国のファラロンで約3割の株式を保有し、外国人保有比率も44%だったため、成立する可能性もあると筆者は予想していたが、3月15日の株主総会で監査役選任の提案が40.3%、自己株式取得の提案が39.6%の賛成率で否決された。
3Dは富士ソフトの不動産保有額が大きく、
ROEが競合他社より低いことを問題視し、「富士ソフトの
企業価値最大化に向けて」というキャンペーンを行っていた。富士ソフトは2024年1月に発表した「企業価値向上策の検討状況に関するお知らせ」で、富士ソフトが策定した企業価値向上策と
株式の非公開化の提案の検討について、独立社外取締役6名のみから構成される特別委員会を設置し、富士ソフトの企業価値を最大化するための経営上の選択肢の洗い出しを進めている、とした。
3Dは16%の株式を保有するサッポロHDについても、不動産含み益が大きい一方、本業のビール事業がアサヒグループHDやキリンHDに比べて見劣りするため、2023年3月に発表した「サッポロHD株主の皆様へ」で、「サッポロの酒類事業は深刻なアンダーマネジメント状態にあり、そのブランド価値は毀損され続けている。サッポロの長期的な業績不振を踏まえれば、サッポロが新中計の目標を達成するためには、大幅な経営の見直しを行う必要がある」と述べていた。
サッポロHDは2000年代にスティール・パートナーズに20%弱の株式を保有され、
TOBを受けたこともあったので、経営に課題がある企業は、時を経て複数の
アクティビストのターゲットになる事例と言える。3DはサッポロHDに株主提案を行わなかったが、2023年決算時に不動産事業の投資方針の見直しとバランスシートマネジメントの強化等を発表した。
■筆者プロフィール■
菊地 正俊(きくち・まさとし)
1986年東京大学農学部卒業後、大和証券入社。大和総研、2000年にメリルリンチ日本証券を経て、2012年より現職。1991年米国コーネル大学よりMBA。日本証券アナリスト協会検定会員、CFA協会認定証券アナリスト。日経ヴェリタス・ストラテジストランキング2017~2020年1位、2023年2位。インスティチューショナル・インベスター誌ストラテジストランキング2023年1位。著書に『アクティビストの衝撃』(中央経済社)、『良い株主 悪い株主』(日本経済新聞出版社)、『日本企業を強くするM&A戦略』『外国人投資家の視点』(PHP)『TOB・会社分割によるM&A戦略』『企業価値評価革命』(東洋経済)、訳書に『資本コストを活かす経営』(東洋経済)などがある。