[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2024年7月号 357号

(2024/06/11)

【ベインキャピタルの担当者が語る】人材派遣「アウトソーシング」バイアウトの経緯と成長戦略

――230社を超えるグループ企業のDDとPMI

  • A,B,C,EXコース
西直史・ベインキャピタル・プライベート・エクイティ・ジャパン・LLC パートナー

西直史・ベインキャピタル・プライベート・エクイティ・ジャパン・LLC パートナー

業界3位の人材派遣会社

 人材派遣事業を展開するアウトソーシングのバイアウトの一環として、ベインキャピタルが実施したTOBが2024年3月に成立し、アウトソーシングは6月6日に上場廃止された。

 アウトソーシングは、1997年に土井春彦氏によって設立。技術系アウトソーシング事業、製造系アウトソーシング事業で急成長。2004年に当時のジャスダック市場に株式を上場、2013年に東証一部銘柄に指定され、2022年に市場区分の見直しによってプライム市場に移行した。同社が急成長を実現した背景には国内外での積極的なM&A戦略があった。グループ企業は2023年9月30日時点で連結子会社236社、持分法適用会社1社となっている。

大手人材派遣企業の売上高 人材派遣業界では、リクルートホールディングス、パーソルホールディングスに次ぐ第3位につけているが、2021年にはグループ会社で不適切会計が発覚、さらに新型コロナウイルス感染拡大を受けた雇用調整助成金では不適切申請も起きた。こうした不祥事に対応したガバナンスの強化とともに成長の再加速を迫られたことが、アウトソーシングの非公開化の背景にある。

 厚生労働省の「労働者派遣事業報告書」(令和4年度報告)によると、市場規模は8兆7646億円(対前年度比:6.4%増)となっている。超高齢化社会を迎え、労働人口の急激な減少などが見込まれる“2025年問題”が指摘されており、業界再編は今後も進むと考えられる。

人材派遣業界のM&A件数の推移
出所:レコフデータ

 今回TOBを実施したベインキャピタルは、1984年の創業以来約1800億ドルの資産を運用する世界最大級の投資会社。2005年に日本進出し、日本ではシステム情報、IDAJ、エビデント(旧オリンパスの科学事業を承継)、インパクトホールディングス、日立金属(現プロテリアル)、ネットマーケティング、トライステージ(現ストリートホールディングス)、Linc' well、日本セーフティー、イグニスキリン堂ホールディングスヘイ(現STORES)、ニチイ学館、昭和飛行機工業、チーターデジタル(現エンバーポイント)、Works Human Intelligence東芝メモリ(現キオクシア)等、34社の投資実績を持っている。

 本件を担当したベインキャピタル・プライベート・エクイティ・ジャパン・LLCの西直史・パートナーに、アウトソーシングのバイアウトの経緯、今後の成長戦略を聞いた。
(本稿は6月6日時点の取材をもとに作成)

<インタビュー>
アジアチーム、ヨーロッパチームの協働体制で再成長を支援

 西 直史(ベインキャピタル・プライベート・エクイティ・ジャパン・LLC パートナー)

<目次>
  • ガバナンス強化と成長の両立を狙って
  • キャピタル・ストラクチャー
  • 人材派遣業界の市場動向
  • “守り”と“攻め”の施策
  • 230社を超えるグループDDのポイント
  • ヨーロッパとアジアのファンドから出資
  • 新たな経営体制
  • 「第2の創業」で社名の変更も
  • 再成長を目指す戦略


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