[Webマール]

(2025/05/15)

相次ぐ上場廃止・完全子会社化にトヨタやNTTも動く

前田 昌孝(マーケットエッセンシャル主筆、元日本経済新聞編集委員)
  • A,B,C,EXコース
株式の上場を廃止する企業が相次いでおり、2025年に入ってからも5月末まで、東京証券取引所だけで42社になりそうだ。経営破綻や投資家保護上の問題が理由ではなく、すべてが企業都合による上場廃止だ。目的として最も多いのが上場子会社や関連会社の完全子会社化である。トヨタグループやNTTグループにも上場廃止の動きがある。一連の動きは歓迎できるのだろうか。
NTTデータの完全子会社化

 正式社名を「日本電信電話」から「NTT」に変更するNTTが5月8日に発表したのが、NTTデータグループの完全子会社化だ。親子上場を解消して子会社の上場を廃止することは、最近の株式の上場廃止要因として最も多く、NTTも今回の措置で上場子会社をゼロにする。

 NTTはすでにNTTデータの株式の57.73%を保有していて、今回は残りの5億9281万968株の取得を目指している。5月9日に始めた公開買付け(TOB)では公開買付価格を4000円に設定したから、これに買付予定数を掛けると、買収額は約2兆3700億円になる。

 NTTは2020年9月にも約4兆2500億円を投じて、NTTドコモを完全子会社にした。NTTドコモもNTTデータももともとNTTから分離した企業だから、両方とも買い戻しのようなものだ。

 いくら完全子会社化前のNTTの出資比率がNTTドコモで66.21%、NTTデータで57.73%に達していたといっても、子会社が株式を上場していて、それぞれのステークホルダーの利益を損なわないようにグループ経営をしようとすると、意思決定に手間がかかる。

 かつては成長分野に挑む子会社を上場し、新株の発行で資金調達する戦略が有効だったが、エクイティ・ファイナンスが簡単にできる時代でもなくなったため、子会社の少数株主の利益を守る手間とコストが高まったのである。



■ 筆者履歴

前田 昌孝

前田 昌孝(まえだ・まさたか)
1957年生まれ。79年東京大学教養学部教養学科卒、日本経済新聞社入社。産業部、神戸支社を経て84年に証券部に配属。97年から証券市場を担当する編集委員。この間、米国ワシントン支局記者(91~94年)、日本経済研究センター主任研究員(2010~13年)なども務めた。日経編集委員時代には日経電子版のコラム「マーケット反射鏡」を毎週執筆したほか、日経ヴェリタスにも定期コラムを掲載。22年1月退職後、合同会社マーケットエッセンシャルを設立し、週刊のニュースレター「今週のマーケットエッセンシャル」や月刊の電子書籍「月刊マーケットエッセンシャル」を発行している。ほかに、『企業会計』(中央経済社)や『月刊資本市場』(資本市場研究会)に定期寄稿。

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、Cコース会員、EXコース会員限定です

*Cコース会員の方は、最新号から過去3号分の記事をご覧いただけます

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

関連記事

バックナンバー

おすすめ記事

アクセスランキング