経験から学ぶ、歴史から学ぶ M&A巧者といわれている企業もミクロのレベルでは実は失敗を重ねている。M&Aに長けているといわれる欧米の企業ですら失敗することもある。単純に会社の屋台骨を揺るがすような大惨事になっていないだけで、彼らは失敗から学んでいる。経験から学ぶことが重要なのは言うまでもないが、それを文字に残し、組織として次世代の人に伝えていくことはさらに重要だ。日本の大企業といわれる企業においても、これまではM&Aといえば、必ず特定の人が対応をしている、ということが多かったように思うが、昨今はM&A機会の急激な増加にともなって、専門組織を作り、ノウハウを蓄積していこうという動きが加速している(図表参照)。
(図表)M&A専門組織の設置割合と役割
M&Aの専門組織をもつ企業の割合は2008年の11%から2017年には46%にも及んでおり、およそ半数の企業ではM&Aの専門組織が存在していることになる。一方で、過去10年でM&Aの成功確率が劇的に上がったかというとそうともいえず、単にハコだけを作って、中身はこれからという状態ともいえる。したがって、論点はまさに如何にして専門組織を活用・機能させるかという点に移ってきている。また、昨今
PMIの重要性は認識されつつあるものの、図表からもわかるとおりPMIを行う専門部隊はまだまだ少ない。これは、そもそも案件が少なければPMIまで専門に行う組織は必要ないとの考え方と理解できるが、M&Aといえばターゲット発掘とディールの
エグゼキューション中心との認識がまだ根深いとも考えられる。
自らの“型"をもつ M&Aの成功は十人十色である。企業によって…
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デロイト トーマツ コンサルティング合同会社■筆者略歴
汐谷 俊彦(しおたに・としひこ)コンサルティング会社、事業会社企画部門を経て現職。
日本企業による海外企業買収にかかわるM&A/PMI、日本企業の海外投資/進出に関する経験多数。
M&Aを基点にした企業変革、グローバル戦略、事業再編に強み。その他事業戦略立案などを主に経験。