M&Aにおける判断軸 本連載第2回となる今回は、「9つの行動」の1点目にあたる「目指すべき姿と実現ストーリーの明確化」について解説をしていく。前回も述べたように、成長戦略としてまず目指すべき姿(ゴール)を定めて、それを実現するための道筋(ストーリー)を明確に定義することは全てのM&Aにおける起点であり、成否を左右するポイントである。M&Aは目的ではなく手段である、とはよく言われることであるが、多くのケースにおいては目指すべき姿を十分に検討する前に(もしくは目指すべき姿とは関係性の低い)特定のM&A案件が検討の俎上に上るため、手段が目的化してしまうことがしばしば散見される。
(図表1)海外M&Aを経営に活用する9つの行動
目指すべき姿と実現ストーリーに基づくM&A戦略は、M&Aのターゲティング、
デュー・デリジェンス、ディール実行、
PMIの全ての局面における判断軸となる。例えば、ターゲティングにおいては、数ある潜在的なM&A候補を選別する基準としてM&A戦略は位置づけられる。適切な選別基準無しにはM&A候補を絞り込むことはできないし、突如持ち込まれた案件に対して取り組むべきか否かの評価を下すことも難しい。
また、デュー・デリジェンスにおいては、M&A戦略を踏まえて特に深堀りが必要なポイントを…
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デロイト トーマツ コンサルティング合同会社■筆者略歴
小高 正裕(こたか・まさひろ)海外企業買収後の統合支援(クロスボーダーPMI)、グローバル・グループ・ガバナンス構築や組織再編など、日本企業のグローバリゼーションを支援するプロジェクトを、消費財、金融、ライフサイエンス、ハイテク、化学、エネルギーなどの業界にて数多く手掛ける。海外企業買収後の業績立て直しや、海外M&A推進能力向上に関するコンサルティングも実施している。
クロスボーダーPMIに関するメディアへの寄稿やセミナーなど多数実施。