野田 努・アリックスパートナーズ アジア共同代表 兼 日本代表(左)とリサ・ドナヒュー・同 米国・アジア共同責任者
アリックスパートナーズは1981年、デトロイトで再生系コンサルティング会社として設立され、日本では日本航空(JAL)やライブドアなどの経営再建に取り組んだ実績を持つ。現在では健全な企業に対する支援まで事業領域を広げており、世界27拠点に2500人の専門家を擁する経営コンサルティングファームに成長している。主力業務の一つがM&A関連のコンサルティングサービスで、
PEファンドの投資案件における
企業価値向上が主な得意分野だ。現在の業務内容と展望、M&A市場の見通しについて、米国・アジアを統括するリサ・ドナヒュー氏、日本代表の野田努氏に聞いた。
「ビジネスモデル変革」を中核事業に ―― もともとは再生系コンサルティング会社です。どのような変遷によりM&A関連サービスがコンサルティング業務の重要な柱になったのでしょうか。
リサ 「当社はリストラクチャリングをルーツとし、企業再生をグローバルに行っていますが、企業再生が収益に占める割合は全体の25%ほどで、残りは健全な企業が直面している難局を解決するものです。現在のビジネス環境ではディスラプション(創造的破壊)が継続的に起きるので、企業の事業成長と収益性向上に重点を置いた業務を展開しています。実際、様々な成長ステージにある企業との仕事が増えており、
カーブアウト、M&A後の
PMI、事業の戦略的方向性を企業と一緒に見定めていく取り組みを進めています。
最注力領域はビジネスモデル変革の支援です。事業環境が目まぐるしく変わる中で、もっと柔軟なビジネスオペレーションを持つ必要があると企業のマネジメントが強く認識しているからです」
野田 「日本企業の多くは、ビジネスモデルの変革を加速するためにM&Aで時間を買い、成長を追求していく必要があります。大企業は現金に余裕のあるところが少なくなく、海外のM&Aも決して経験豊富とは言えません。
日本の上場企業の平均的な
ROEは10%以下で、欧州企業の14%、米国企業の21%と比べると大きく見劣りします。
アクティビストと呼ばれる株主に限らず、収益改善に対する資本市場からの圧力は高まっており、不採算事業をどうするのかは大きな議論の対象の一つになっています。そうしたなか、業歴の長い企業がノンコアの事業を売却し、得た資金を元手にコア事業の強化につながるM&Aをしていくというサイクルが起きています。難易度が高く、多額な資金が必要となる案件に、我々のような助っ人が入るメリットは大きいはずです。
我々は、PEファンドが企業を買収した際のバリューアップ支援も積極的に行っています。投資してから売却するまでの2~5年の間に企業価値を上げるための支援を行います。そうした『目に見える価値』を提供するのが我々の特徴です。PEファンドの投資活動と適合性が高いです」
アリックスの3つの特長 ―― 他社とは違う強みはどういった点ですか。…
■リサ・ドナヒュー
1998年よりアリックスパートナーズに参画、現在は米国・アジア共同責任者。これまで20年以上にわたり、アエロメヒコ航空、ウエスチング・ハウス、プエルトリコ電力公社など多数の企業のCEO、Chief Restructuring Officer (最高再建責任者)、Chief Transition Officer (最高変革責任者)として企業変革の分野で成果を上げてきた。フロリダ州立大学卒業。
■野田 努(のだ・つとむ)
慶応義塾大学経済学部卒業、ハーバード・ビジネス・スクール経営学修士(MBA)取得。日本長期信用銀行、マッキンゼー・アンド・カンパニー、KPMG、ユニゾン・キャピタルを経て、2007年よりアリックスパートナーズに参画し、現在、アリックスパートナーズ日本共同代表。